juryと死刑
スコットランドの高等裁判所(ある意味では最高裁判所)であるCourt of Sessionの判事さんとおしゃべりをする機会に恵まれた。
その時の話で印象深かったのは、死刑と陪審制について。
日本の裁判員制度は、外国でもメディア的には極めて注目されているが、その裁判員が死刑の選択を迫られる場合もあることについて、話が及ぶと、次のようにいわれていた。
「イギリスで死刑の廃止に踏み切った理由の1つが、陪審の死刑選択の重圧と、場合により誤判の可能性が否定できないというところにあった。その意味で、日本が陪審(裁判員)制度を導入した後、死刑をどうするのかは注目だ」
誤判の可能性といえば、別に裁判員制度に特有なものではなく、足利事件と同時期にいわゆるDNA鑑定によって有罪とされた事件で死刑が執行されたケースもある。しかし現在の短期間・少量証拠による審理で裁判員の負担軽減を最優先するようなシステムでは、死刑もあり得る重大事件でかつ否認事件の場合に正しい判断が得られるかどうかは保証の限りでない。
死刑制度の存否については、廃止国でも世論調査では60〜70%が死刑賛成だそうである。にもかかわらず、為政者は廃止を選択した。そういう宿命を負った議論である。
「もし死刑制度が復活したら、私は判事を辞める。」
それが判事の言葉であった。
千葉法相も、中途半端なサボタージュでお茶を濁すことなく、正面から是非についての議論を展開してもらいたいものである。
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