jury:調書裁判の弊害を排除する裁判員裁判に分厚い調書
ボ2ネタ経由で知った。
取調調書というのは取調官が作文し、あたかも被告人・被疑者が語ったかのような体裁を整えて作成するモノなのだが、それを「迫真性がある」などと真に受けてしまう困ったちゃんがたくさんいるので、それならもう少しマシな市民感覚を導入しようとして裁判員制度が作られたのである。
裁判員が限られた時間で審理するならば、分厚い調書を提出しても読んでもらえず、まして調書を朗読するという睡眠導入型審理はできないということだったはずだ。
ところが・・・
Yahoo!>産経:【裁判員裁判】分厚い供述調書は検察なりの“可視化”?
東京地検が今回の裁判で提出した供述調書は、弁護側によると従来の刑事裁判に提出されていた簡略なものに比べ数倍の分量がある。事件に関係のない雑談部分なども含めて、詳細に書き込まれているためだ。
上記のような経緯はどこへ行ったのか、結局調書裁判なのかという失望ばかりを感じるが、それ以上に、取調官が作成した文書にいくら雑談を書き込んだところで、取り調べの状況を取調官の視点で整理してまとめたものという性格に変わりはない。
取調官が自分たちの都合の良い部分だけ切り取って録画するのと同様に、取調官が内容を取捨選択した調書は、もともと証拠価値は低いのである。
それなのに、弁護人ですら「被告の供述調書を細かく取ることで、検察側なりに全面可視化に近づけようとしている」と一定の評価をしてしまうのだから、もうなにをかいわんや。
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コメント
まだよく分からないのですが、サンケイ新聞にこんな記事が出ています。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090804/trl0908041525025-n1.htm
裁判員が、被害者の長男の警察での調書と法廷での証言のちょっとした違いを突いて、
>女性裁判員「えーと、先ほど(母親の)人物像の説明で、
>調書と食い違うところがあってひっかかるのですが、どのように確認しましたか」
>
>裁判長「警察で調書を作ったときの調書の内容の確認方法を聞かれているんですが」
>
>《全国初の裁判員裁判となった今公判で、初めて口を開いた裁判員。
>声は小さいながらも、はっきりとした口調で質問を終えると、
>首を軽く右に傾けながら、証人の長男が答えるのを待った。
>他の裁判員も長男の方を見つめ、答えを待っている》
>
>長男「正直、覚えていないんです。
>ぼーっとしていて、調書を読んだらサインしていました」
>
>女性裁判員「書いたのを自分で読んでサインしているんですか」
>
>長男「読んだのも覚えていないんです。
>正直、(事件当日の)午後から、まるっきり覚えていないんです」
という証言を引き出しています。
ちょっと以上に興味を惹きました。
投稿: 酔うぞ | 2009/08/04 16:27