consumer:損害拡大防止義務
J-CASTニュース:アリコ余波 再発行申し出少なく困惑するカード会社
アリコから情報漏えいによりクレジットカードの不正使用のおそれが生じ、カード保有者にカードの更新をしてもらって不正使用を防ごうとしたわけだが、肝心のカード保有者に危機意識がなく、カードの更新が進まないというニュースである。
カード会社側が不正使用の情報をキャッチして、アリコジャパンに連絡した件数は、7月29日の21社、2700件から同31日には2850件と、150件増えた。 アリコジャパンは8月3日、情報が流出した可能性がある13万人がクレジットカードの再発行を希望する場合、その手数料をアリコが負担すると、改めて発表。不正使用被害の拡大を食い止めるのに懸命だ。 (中略) カード利用者が「差し替え」を拒む理由は、通販にカード決済を利用するケースが増えているためで、「カード変更に時間や手間がかかって、利用したいときに利用できない」「支払(決済)先への変更手続きが面倒だ」といった理由が多い。 (中略) あるカード関係者は「カード会社の補償サービスが充実していて、利用者が安心しきっている」ことが、差し替えが進まない原因とみている。
クレジットカードが不正使用されると、そのリスクは第一次的にカード保有者が負うが、不正使用と認められれば、カード会社が負担し、さらに不正使用の原因を作ったアリコが最終的に負担することとなる。
しかしながら、不正使用のリスクが現実に生じていることを知りながら、そのリスクを回避できる手段があるのに実行しなければ、そのリスクが現実化したときの損失はリスク回避行動をとらなかった者、すなわちカード保有者が負担すべきではなかろうか?
もちろんこのように言うためには、それ以前に、カード保有者に損害拡大防止義務があるという法的評価が必要である。そしてクレジットカードの契約関係においては、既にカード保有者にはカードの不正使用を防ぐための法的義務が課せられている。カード貸与の禁止とかカード・パスワードの秘匿管理などである。そうした契約上の義務からも、カードの不正使用の可能性が現実化している段階では、カードの再発行手続をとるなどの法的義務があると言うことができそうである。ただし、その手数料はカード会社や不正使用の原因を作ったアリコが負担すべきであろうが。
そう考えると、カード会社としてはカード保有者に対してカード再発行を申し出るように通知すべきであり、それをしなければカード保有者に損害拡大防止義務違反を問うことはできないだろうし、その結果生じた不正使用のリスクをアリコに転嫁することも許されなくなるのが道理である。
つまりカード会社自身も、アリコのせいで生じたリスクを、現実化させないような注意義務があるのである。
そうしてみると、上記記事の「今回のアリコの件で、カード利用者に差し替えを求めることはありません」というカード会社側の態度は、問題があると言わざるを得ない。
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