book:大聖堂
12世紀のイングランド・ウェールズを舞台とした歴史小説である。
ただし、歴史小説といっても王や貴族が主人公となる歴史物ではなく、どちらかというと市井の人に近い修道院長と飢え死に寸前まで行った石工職人一家や無法者と訳されているアウトローの物語が中心となっている。
だいたいノルマン・コンケストの後、つまりウィリアム征服王の後というのはあまりよく知らないし、何となくノルマン朝はイングランド・ウェールズ全体を支配したような気になっているが、そうでもないらしい。ケルトの公国が出てきたりしてややこしいが、支配階級の言葉はフランス語で下層民は英語であり、しかもウェールズ訛りの英語をしゃべると支配階級の面前では恥をかく等というあたりは分かりやすい。
物語は、大聖堂を自らの手で建築するのが夢という石工職人が柱になっているので、大聖堂とは何かが問題になる。
原語が併記されていないが、大聖堂とは要するにカテドラルのことであり、つまりは司教のいる教会ということだが、建築的にはドームを備えた、大きな教会堂のことを指している。
現代の目から見ると、カテドラルといえばウェストミンスター大寺院とかパリ・ノートルダム大聖堂とか、リヨン・サンジャン教会とかを思い浮かべ、あんなでかいのをホームレス寸前の石工職人が作れるのかと考えてしまう。が、時代は12世紀である。それくらいの時代の教会跡、修道院跡という遺跡を見ると、その近くにある現在の荘厳な教会に比べてこぢんまりとしか見えないし、高さも、せいぜい4階くらいが関の山の時代であろうから、そう不自然でもないのかもしれない。
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