arret:最高裁過払い金請求に少しブレーキをかける
例の期限の利益喪失約款がある時には任意支払いとは認めないという最高裁判決以前に受領していた無効な利息について、不当利得について悪意といえるかという問題である。
原審は、任意の支払いと認めるという最高裁判決がなかったのだから、悪意とは認められない特段の事情は認めがたい、つまり悪意と認めた。
これに対して最高裁は、以下のように判示した。
平成18年判決が言い渡されるまでは,平成18年判決が示した期限の利益喪失特約の下での制限超過部分の支払(以下「期限の利益喪失特約下の支払」という。)は原則として貸金業法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」ものということはできないとの見解を採用した最高裁判所の判例はなく,下級審の裁判例や学説においては,このような見解を採用するものは少数であり,大多数が,期限の利益喪失特約下の支払というだけではその支払の任意性を否定することはできないとの見解に立って,同項の規定の適用要件の解釈を行っていたことは,公知の事実である。平成18年判決と同旨の判断を示した最高裁平成16年(受)第424号同18年1月24日第三小法廷判決・裁判集民事219号243頁においても,上記大多数の見解と同旨の個別意見が付されている。 そうすると,上記事情の下では,平成18年判決が言い渡されるまでは,貸金業者において,期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり,貸金業者が上記認識を有していたことについては,平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。したがって,平成18年判決の言渡し日以前の期限の利益喪失特約下の支払については,これを受領したことのみを理由として当該貸金業者を悪意の受益者であると推定することはできない。
最高裁判例が一つの法解釈を示すまでは、その法解釈を前提とした不当利得の成否について悪意とはいえないということなので、判例変更があったときにその変更後の法解釈はその事件の当事者が知っていたものとは扱えないということを意味する。
判例変更の遡及適用の是非という問題に一石を投ずる判断である。
同旨:最判平成21年7月14日(PDF判決全文)
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