news:謝罪は異例に潔いが、十分ではない
日頃メンツで動くといわれる検察にしては、最高検の次長検事が公の場で謝罪するなどよっぽどのことだ。
asahi.com:「真犯人とは思われない人を」検察、菅家さんに公式謝罪
しかし、等の菅家さんがおさまらないのは当然として(足利事件:最高検謝罪に菅家さん「絶対に許さない」)、一般国民としてだって謝罪すればよいというものではない。
検察が責任ある対応をしたいというのであれば、被害者への補償・賠償をするのはもちろんとして、最低限下記のすべてを行うべきである。
・DNA鑑定により誤判がもたらされたということであるので、足利事件と同様に方法で行われたDNA鑑定はすべて、再調査をすべきである。
その中にはもちろん飯塚事件もふくまれる。
・取り調べを全面的にビデオにとり、自供の任意性・信用性が争われたら、ビデオを持って検証できるようにすべきである。
実際、ビデオに撮られたら自白を引き出す尋問が出来なくなるといって、警察も検察も自分たちの都合のいい場面だけをビデオにとって「可視化」と称しているが、ちゃんちゃらおかしいのである。そこでとられたら困るといっている取り調べは、「『ほかの事件でも取り調べをされると思っていたんじゃないのか』と言われました。そのとき返事はしませんでした。強引なんですよ。『知りません』というとガンガンガンガン体を揺すってくる。私を(机に対して)いすごと横向きに座らせ、Aが私の前に来て私のひざ上当たりをつかみ、『おまえだよ、おまえだよ』と思い切り揺すってきました」などというやり方で被疑者を追い込んでいくやり方なのではないか?
・警察は反省の色が皆無である。
菅家利和さん(62)が「刑事に髪を引っ張られたり、『早くしゃべって楽になれ』と厳しく追及された」などと栃木県警の捜査手法を批判している問題で、県警の白井孝雄刑事総務課長は9日の県議会文教警察委員会で「(取り調べで)暴行や自供の誘導、強制があったとは認められないと裁判で認定されている」と述べた。
佐藤勉国家公安委員長は5日の閣議後会見で「当時としては精いっぱいの捜査をした結果、ああいうことになったが、あってはならないことで厳粛かつ重く受け止めている」と述べた。
つまり、精一杯誠実にやった結果が、無実の人を17年間牢屋につないだというわけである。今後もあり得ることだが、犯人を捕まえるためには多少の冤罪事例もやむを得ないといっているに等しいではないか?
で、悪くするとなんかDNA配列を肉眼で見比べて同じだと思えば、犯人性の決め手にされて、最悪の場合は死刑にされてベルトコンベア式に署名する法務大臣を経て処刑されてしまうかもしれない。そういう可能性があっても、犯人を取り逃がすよりはましだというのが、前面可視化反対者の本音なのであろう。
「100人の罪人を取り逃がすとも、一人の無辜を罰することなかれ」
大学ではこのように習ったのだが、実務もこのことを前提に動いてほしいものである。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント