univ:非常勤講師の悲惨さ
年収100万円台も珍しくない 非常勤講師「使い捨て」の悲惨
(連載「大学崩壊」第5回/首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長に聞く)
まあ、何を今更という感があるが、この連載としては格好のネタなのであろうか。
確かに専業の非常勤講師というのは悲惨な境遇になる。要するに月収2〜3万のアルバイトをいくつか掛け持ちして生計を立てている人なのだから、想像に難くない。
この記事では、かつては非常勤を2,3年やれば常勤の講師・助教授になれたとあり、今はそうでないから大変になったという趣旨のことが書かれているが、それは事実として誤りであろう。昔から、専業非常勤をいくらやってもそれで常勤につながるというのは例外現象であって、決してそのようなルートがあったわけではない。
おそらくは、助手(助教)・院生として非常勤をやり、非常勤先に就職という流れのことを言っているのだと思うが、それは専業非常勤とは別の話である。
ではどうすればよいか。
この委員長さんがいうように、「同一労働は同一賃金」と主張し、専任と非常勤の格差解消が必要だというのであれば、授業負担に応じた賃金という構造にするしかないが、専任教員の給与体系は授業負担に比例して設定されていないのだから、もともと無理なのである。同一労働同一賃金というなら、常勤教員の間にも不合理な格差があるのだが、これもどうにかしないとならない。
非常勤教員についても、例えば科研費のような競争的資金から排除せず、また少なくとも研究室や図書館の利用面では常勤教員と同程度の待遇を付与するということは、すべきであろうと思う。
また雇い止めについては、解雇規制の保護があって然るべきだ。
加えて悪しき平等主義も問題で、非常勤でも高額の報酬で来てほしい人と、そうでない人とは差があって然るべきである。
しかし、特に研究環境に配慮することは必要だとしても、結局のところ、業績を上げて常勤職に就くよう努力していただくしかないのである。
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コメント
>決してそのようなルートがあったわけではない。
では、どのようなルートが本流なんでしょうか。
「大学教授になる方法」
では、非常勤講師は大学教員の道の第一歩みたいに書いてありました。
Ph.Dを取ったからって、すぐに常勤職が見つかるものでもないでしょう。
投稿: Inoue | 2009/05/08 06:43
分野により異なると思いますが、法学では、ひたすら、論文を書いて、学会を同じくする先生方と研究会などで一緒に仕事をし、公募に応募し、あるいは指導教員のつてで紹介を受けるというのが一般的で、それ以上に就職活動をしても効果は乏しいように思います。
非常勤講師の履歴も採用審査の時に重視するという大学はひょっとしたらあるかもしれませんし、迷ったときにプラス材料にならないことはないでしょう。少なくとも採用担当者が目をとめるきっかけくらいにはなると思いますが、就職するにはまず非常勤から、というような関係にはありません。
例の鷲田先生の本は私もかつて読みましたが、真実をベースに話を面白くしているところがないわけではありません。
また博士号と就職とは、少なくとも法学分野ではリンクしていません。もちろん一流大学で学位を取るということは、その研究に対する評価として価値があるわけですが、学位の有無より論文の中身に注目します。
だから、ディプロマミルとかに引っかかるのは、研究者としての常識を欠いた人と思ってましたが。
投稿: 町村 | 2009/05/08 09:50
なるほど、少なくとも、あの本が書かれた当時の哲学分野以外では、同じ話は通用しないのかもしれませんね。
投稿: Inoue | 2009/05/08 15:05