ニッポンの秘境発見!クレジットカードがダメな業界
asahi.com:弁護士報酬、カード払いダメ 日弁連が容認方針を転換
まったく呆れかえるのだが、これに呆れかえると思わない人とはお話が決して合わないだろう。
日弁連という業界団体が高度な自治権を有していることは、市民の一人として率直に大事なことだと思うが、この種の「規制」を乱発するようなら、そんな自治の主体たり得るのかという話に必ずつながる。
大体クレジット払いがダメな理由として上記の記事に引用されているのは以下の二つ。
・「支払いの繰り延べや分割払いなど利便性が強調され、弁護士の仕事がビジネス化しかねない」などの懸念が多数寄せられた
・「カード利用を発端とした多重債務問題が解決していないうちに、カード会社と手を組むのはおかしい」(日弁連のある幹部)
いやー、弁護士の仕事がビジネス化しかねないというのは理解しにくい。初めからビジネスであろう。というかビジネスの側面がないわけではなかろう。それにカード払いでの利便性が利用できるようになると、そのこと自体で誰がどのような問題を抱えるというのか? カード払いに伴うコストを弁護士さんが回収しようと金儲けに走るという懸念なら、分からないではないが、法律事務所運営コストをまかなうためにやっている収益追求とどう違うのか?
また第二の理由は、まさしく匿名でしか口にできない理由であろう。さすがの朝日もおもしろがってわざわざ取り上げたのだろうか? それとも上記「日弁連のある幹部」殿はクレジットカードを使わない暮らしをしているのか?
クレジットカード払いが法律事務所でもできるようになると、特に個人のクライアントには利便性が高まる。そうなると、クレジットカード払いができる事務所とそうでない事務所との間に、集客力の格差が出てくるし、その格差はしかも表から見えやすい。
他方でカード会社と頻繁に訴訟をするような案件を多く受けるところは、利益相反ともなりかねないので、クレジットカード会社と継続的な加盟店契約を結ぶことはしにくい。だからそういう消費者よりの事務所が不利になるではないかと、そういう理由なら理解できる。
しかしこれはいかにもギルド的発想である。
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コメント
ここ数年で、1万円程度の相談料をクレジットカードでの支払いを希望された方が2名いて、結局分割でいただいたことがあります。
そこで、試しにクレジットカードの加盟店に登録したのですが、カード会社から分割払いは不可になっています。その後は希望者がいませんので、結局、カード支払いの手続きを実践したことがありません。
その程度の需要だと認識しています。
投稿: 奥村 | 2009/03/20 18:02
弁護士費用の分割リスクを誰がどう負うのかという問題もありますね。
投稿: 町村 | 2009/03/21 05:46
事件によっては委任契約を取り消すこともありますが,加盟店契約をしているとなると,どこまでを返金するのか,事件の内容や取消原因について弁明する必要も出てきたりして守秘義務の問題にもなり得ます。
単純な物の売買契約の立替払いではないですから,実は簡単ではないのではないかと思います。
そのほかにも意見書には検討の結果がかなり詳細に記載されていたと思います。新聞報道は彼らに理解できたことの一部の抜粋に過ぎません。
法曹ブログとして一定の影響力がある先生にこそ,もう少し深く検討していただければと思いますので,ぜひもう一歩踏み込んでいただければ幸いです。
投稿: JackDaniel | 2009/03/22 17:11
JackDanielさん、
そうはいっても一般市民が報道を元に判断するのは当然のことで、より詳しい検討がなされたことを理解してほしければ、せめてネットにアップする程度の努力はすべきじゃないでしょうか?
投稿: 町村 | 2009/03/23 00:01
>そうはいっても一般市民が報道を元に判断するのは当然のことで、より詳しい検討がなされたことを理解してほしければ、せめてネットにアップする程度の努力はすべきじゃないでしょうか?
おっしゃるとおりで,私も少し前に見たことがある東弁の意見書や日弁の意見書などを参照しようかとネットを探したのですが,見つけることができませんでした。不親切ですね。
まあ,しょせんあるビジネスとしての一業界の話と考えればむしろ説明する義務なんてなく,普通の話でしょうが,公益性が強い仕事なのですから,きちんと身内の議論も開示して説明すべきなんでしょうね。
投稿: JackDaniel | 2009/03/23 22:10