Book:学術情報流通とオープンアクセス
倉田敬子さんの著書である。
オープンソースの問題とよく似た問題状況は、テキストにもあるが、学術論文のオープン化にはそれ相応のハードルがある。
例えば査読の有無を重視するというのが、最近の日本の学術界でも流行っているが、もともと査読という習慣のない法律系では、査読論文をありがたがること自体アホではないかと考えられてきた。今でも、少なくとも法律論文については「アホではないか」といってよい状況にある。というのも、要するに影響力のある学術論文が査読付き雑誌に載ることよりも、普通の法律雑誌や紀要、単行本、講座ものに載ることの方が多く、査読付きということが論文の重要性を図る指標とは全くなっていないのである。
ところが、そういうことを知らずに、あるいは知っていても「そんなの関係ねぇ」という官僚が、補助金の支給に査読付き論文の数を問題にさせ、査読付きであることを有り難がる風潮を押し付けてきているのである。
いわゆる査読のプロセスを経ることなく、編集者や専門家編集委員の評価により掲載が決定されることをもって査読付きだと自称することさえ出てきている。
以上のことは本書とは全く関係のない話だ。
本書についていうなら、とにかく読者1.5人の大学紀要はすべて、オープンアクセスを保障してもらいたいものである。査読よりもオープンアクセスを保障していることでポイントをつけたらどうかと思う。
ちなみに、北大法学部紀要「北大法学論集」は、オープンアクセスを保障している。
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