arret:銀行預金払戻請求と権利濫用
夫の定期預金と自分の普通預金のそれぞれ通帳・印鑑を盗まれ、夫の定期預金を解約して自分の普通預金口座に振り込まれ、その普通預金口座から現金を引き出されてしまった被害者が、銀行に対して、夫の定期預金解約分も含めた普通預金の払い戻しを求めたところ、原審で権利濫用だとされてしまった。
これに対する上告審である。
上告代理人の齋藤先生に私法学会でお会いしたとき、この判決の話をしたら、もう当然の主張を最高裁に認めてもらってよかったけど、差戻審ではどうなるか・・・というコメントをされていた。
判決文の一般命題は以下の部分。
受取人の普通預金口座への振込みを依頼した振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在しない場合において,受取人が当該振込みに係る預金の払戻しを請求することについては,払戻しを受けることが当該振込みに係る金員を不正に取得するための行為であって,詐欺罪等の犯行の一環を成す場合であるなど,これを認めることが著しく正義に反するような特段の事情があるときは,権利の濫用に当たるとしても,受取人が振込依頼人に対して不当利得返還義務を負担しているというだけでは,権利の濫用に当たるということはできないものというべきである。
問題は、払い戻されてしまったことで、銀行が債権の準占有者への弁済として免責されるのかどうかであり、差戻審はその点を、つまり銀行の過失の有無を判断することとなる。
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