E-Moneyの現状
日銀のサイトに「最近の電子マネーの動向について」というレポートが掲載されている。
本文(PDF)もある。
2007年度末の発行残高(未使用分)は771億円とのことである。
また同年度の決済件数は810百万件、同決済金額は5,636億円となっている。
調査対象は「Edy」、「Suica」、「ICOCA」、「PASMO」、「nanaco」、 「WAON」の6電子マネー
であり、Suicaなどの交通系カードで乗車券として利用されたものは、上記の決済件数・金額に含まれていない。
2008年3月末の発行枚数は8,061万枚で、そのうち携帯電話搭載分は942万枚。いわゆるおサイフ携帯のシェアは11%強を占めている。
決済件数は多いが、一件あたりの決済金額は低く、平均で696円である。
#まあ、個人的にも、今日エディで水を買った(130円)し、土産のお菓子も買った(1300円くらい)。平均すればそんなものであろう。
駅で使われる交通系は単価が低く、店舗で使われる流通系は単価が高くなる傾向にあるという。
カード一枚あたりの平均利用件数、金額は意外と少ない。月に1.0回程度、計722円の決済に利用されている計算になるという。
ただしこれは死蔵されているカードも含めた統計なので、それらを除けば数倍となるという。
#個人的に、電子マネー付きの死蔵カードは2枚ほどあるので、これも実感に沿っている。
「利用者は決済直前に必要な金額のみをチャージし、日常的に保有する電子マネー残高を極力抑制しているとの傾向が指摘されている」というが、特に文献などは引用されていない。
一般的な感覚としてはそうかもしれないし、紛失リスクなどを考えるとそれも合理的ではあるが、個人的には常時使う電子マネーの普段の残高を5000円以下にはしたくない。でないとスーパーなどの買い物に使えないからである。
おサイフの中に常時いくらの現金を持ち歩くかという感覚にも依存するだろうが、できれば、1万円程度の残高で維持されいると、困ることはほとんどなくなる気がするが。
さて、電子マネーはどれほど現実の通貨に代替しているか?
上記の発行残高(771億円)は、現金通貨流通量の0.1%に相当するそうである。貨幣流通量と比較すると、1.7%に相当する。
多いと見るか少ないと見るかは議論が分かれるだろうが、私見としては結構善戦しているというか、かなりの割合を占めるようになってきたという印象である。
少額貨幣の流通量が減少している現在の状況に、確実に影響を与えているのではないか?
これで大都市のみならず、地方都市でも普及が進めば、また合従連衡を経てコンビニ系がスーパーや商店、タクシーなどに利用可能性を広げていけば、文字通りのおサイフ代わりとなるであろう子、その時代はすぐそこまできている気がする。
上記の日銀レポートでは、情報セキュリティとして不正使用のリスクとサービス障害のリスクに対する備えを必要だとしている。
しかし、倒産リスクに対する利用者の備えも忘れてはならない。プリカ法の適用があるものであれば半分は保証されているとはいえ、流通残高はすでに700億円を超えているのであるから、1社だけでも数10億円の利用者被害を引き起こす可能性がある。
これに加えて、ネットワーク型の電子マネーも考えると、引当金保証はないかもしれないのである。
いずれにしても、消費者にとっては利便性とリスクとが共に高まっている現状を十分承知の上で、利用しなければならない。
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コメント
思ったよりすごいですね。
なんだかんだ言っても700億のマネーを財布預金から金利もつけないで引き揚げているのか……
投稿: サスケット | 2008/08/23 11:31
金利は、ポイントということでしょうかね。
ちょっと利を付ける計算原理がちがいますけど。
投稿: 町村 | 2008/08/23 23:15