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2008/07/11

jugement:貸金業者の交渉応諾義務義務

名古屋簡判平成20年5月8日PDF判決全文

クレジットカウンセリング協会とおぼしきA協会が債務整理の相談を受けて、弁済方法の提案をしたとしても、貸金業者は本人または代理人とでなければ交渉しないとして貸し金支払い請求訴訟を提起したという事案。
これに対して債務者が反訴を提起し、同協会との交渉をしなかったことが不法行為に当たると主張した。

判決は、「被告は,原告がA協会との交渉を拒否したことが違法行為にあたる旨を主張しているが,A協会から交渉やあっせんの申し出があった場合,貸金業者はこれに応じなければならないとする法,規則等の規制は存在しないから,応じないからといって直ちに違法性を帯びることにはならない。
・・・A協会は公益的な観点から多重債務者の債務整理等にあたり,その活動は債務者のみならず債権者にとっても有益であることが認められ,A協会が主体となって策定された弁済計画案は,債務者の支払能力に応じた内容であることから,債務者にあっては経済的再建が,債権者にあっても債権回収が図られる可能性が十分に認められるので,A協会との交渉には積極的に対応することが好ましいが,上記のとおり交渉に応じなければならないとする法的な義務があるとまでは認められず,債権者には交渉に応じるか否かについての選択権があり,交渉に応じないことに正当理由は不要であると解するべきであるから,交渉に応じなかった原告の対応に違法な点は認められない。」としている。

なかなか興味深い事例である。
倒産処理では、再建型手続が清算型手続に優先するし、ADR法でも訴訟係属中にADRが進行すれば訴訟の方を中止する(ことができる)。=ADR法26条

これらの法の背後には、過重債務者について清算より再生、訴訟より交渉による解決を優先するという政策が見て取れる。が、訴える権利を奪うところまではいっていない。

A協会が業者の提起する訴訟に先んじて交渉の場とされなければならないのだとすると、訴え提起の権利を明文なくして奪うことになるし、時効との関係はどうなるのかという問題も出てくる。
もっとも、たとえ交渉応諾義務を認めたとしても、消滅時効が迫っている時は別段と考えることもできよう。また、交渉主体がA協会のような公的に認められた存在ということで絞りをかけることが適切なのかどうかも問われる。

結局、どちらにするか微妙なところだが、明文の規定がなくても業者側に情報提供義務(取引履歴などの開示義務)が認められるように、債務整理のための交渉に応じる義務を認め、さらにそれを代理人となっていないA協会が間に入っていても直ちに否定することはできないと考えたい。A協会が整理屋のような存在なら別だが、そうではなく、かつ間に入って交渉を担当するだけの合理的理由があれば、その権能を認めてもよいと考えられるからである。

任意的訴訟担当ならぬ、任意的交渉担当というべきか。あるいは裁判外の補佐人というべきか。

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コメント

タイトルの義務がだぶっていますが…

弁護士介入後の本人との直接交渉が禁止される根拠は、行政法的には貸金業法とそれにもとづくガイドラインですが、民事法的には信義則なんでしょうね。裁判をうける権利は弁護士介入後も貸金業者には奪われませんから、それとの対比でもちょっとしんどい解釈かもしれません。

債務不存在確認訴訟を地裁におこして貸金業者の代表者・支配人をひっぱりだす、というのも手としてはあり、こっちのほうが貸金業者にしてみればこたえることもあります。(うちの場合は開示がおくれた業者には社長や支店長や役員もついでに訴えます)。

投稿: madi | 2008/07/14 00:14

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