France民訴法研究会…迅速性の原理
パリ第10・ナンテール大学のSoraya Amrani-Meki教授を同志社大学寒梅館にお迎えして、特別例会としてフランス民訴の最新事情をお聞きした。
フランスでは迅速性の追求がブームらしく、そのための訴訟法改革が矢継ぎ早に行われている。また経済分析の成果を取り入れた議論も盛んであり、そのために訴訟を単純化した議論が横行している。
そもそも迅速性が原理かというと、単に目的の一つにすぎないもので、原理というほどの、第一順位の価値があるものではなく、例えば適正さと迅速性とが衝突する場面では適正さの方がたいてい優先する。
ヨーロッパ法の立場からは合理的期間内に判決を下すことが求められるが、やみくもに迅速であればよいというわけではない。
迅速性を求めるにしても、訴訟の種類や訴訟の段階により必要な時間は異なるし、一概にはいえないのである。
フランスでも、日本でいわれる経済訴訟と人格訴訟の違いは意識されていて、経済訴訟は寒い訴訟、人格訴訟みたいのは熱い訴訟と名付けた学者がいる。それによってもまた、訴訟にかけられる合理的時間は異なる。そうしたことをすべて捨象した単純な迅速化論は、訴訟手続に本来求められる理念や衡平な手続の保障、訴訟手続の質の高さなどを損なうおそれがある。
例えば、判決書きの簡略化が提案され、そのモデルが示されている。しかし十分な理由付けが欠けた判決は、その適正さに異議を申し立てることもできず、当事者に説得力もなく、結局紛争を上訴や執行で繰り返させる羽目になる。
他の例としてはレフェレの本案化現象であり、これを是認してレフェレ命令に一定期間異議がでなければ既判事項の権威を与えてしまおうという提案もなされている。
こうした流れで控訴審の改革も近い将来予定されているという。
さらには情報技術の利用も促進されているが、こちらは弁護士の抵抗ですすまないらしい。
できる範囲で通訳をしていたが、話を追うのに精一杯で、3時間はあっという間であった。
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