Blogでクビ
全く毎日のようにブログ関連ニュースが現れるものだが、憂さ晴らし・王様の耳系のブログ利用がクビを招いた例である。
毎日jp:ブログ書き込み:「上司殺したい」横浜の29歳教諭を処分
教諭は6月以降、自分で開設したブログに「教頭抹殺したい」や、女性教諭の実名に続いて「死ね」と51回書いた。さらに「教師殺しがあったら、それはオレです、絶対」とも書き込んでいた。
内心の自由も、外に表出すれば、外部から評価の対象となる。しかし、昨今の風潮は例のアキバ通り魔の余波で、こういうのに対する許容幅が極端に狭まっているように思われる。
王様は、ロバの耳という井戸からの声を聞いても床屋を罰しなかったものだが、内心のどす黒い感情を表白してしまえば、周囲の人からは危ない奴と思われ、アキバ通り魔と重なって排除されるに至る。それが現在の姿だ。
悪いことに、アキバ模倣犯が書き込みに留まらず、現実の通り魔まで及んでいるように見えるので、こうした許容性の減退に反対しにくいところがある。
しかし、そんなことを言えば、内心の思いを芸術系で表出する小説家や画家、その他の表現者だって社会的には抹殺されそうである。芸術的才能のない個々人は、居酒屋でくだを巻くというのが伝統的なやり方で、せいぜいブログでささやかな自己表現を行い、憂さ晴らしするしかない。
さらにいうと、社会とか、周囲の人々とかに不満を抱き、ルサンチマンを抱き、やり場のない怒りやコンプレックスに悩まされている人は少なくない。というか、青春期には大多数の人がそうした負の感情を経験することだ。大人になったって、会社でも社会でも、不満の種は尽きないものである。
そうした時の負の感情は、誰でも持ち合わせていて、しかしそれを上手くなだめつつ、ある時は発散し、ある時は押し隠し、社会生活を維持しているのが大部分なのだ。一見匿名性が高いように見えるネットは、さらに他人と感情を共有できて共鳴できる場にも見えて、そうした負の感情の表白を招きやすい。
上記ブログで殺したい衝動の表白をした先生はその典型だ。ブログ炎上現象で、尻馬に乗って駆けつけ火をつける人々も、負の感情の裏返しによる攻撃衝動が現れているケースも多々あり、その形を変えた姿というべきである。
しかし匿名でそれぞれ情報発信をしている世界は、それほど甘い世界ではなく、その参加者が幼児化して感情をむき出しにぶつけ合う世界でもあるので、誰かに分かってほしいという表現が余計に傷を深くすることはあり得る。そうでない場合ももちろんあり得るが。報道されているところからすると、例のアキバ通り魔は傷を深めたタイプらしい。
自宅の中でヌーディスト生活を満喫しても問題はないが、路上でそれをやれば犯罪だというのと同様、紙媒体の日記帳やチラシの裏に負の感情を表白しても問題はないが、公開の場でそれをやれば問題が生じる。ただ公開の場でも表白の仕方によっては、許容される領域がある。ブログとか掲示板とかで思いを赤裸々につづると問題があり、場合により犯罪となったり、社会的にも抹殺される可能性があるわけだが、小説仕立て、フィクション仕立てにすれば、許されそうである。
しかし、ブログとして書く方がずっと楽だというのもあるし、なかなかどうも。
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コメント
投稿: 名前 | 2008/07/27 03:35
直しました〜。
投稿: 町村 | 2008/07/27 07:36
>誰かに分かってほしいという表現が余計に傷を深くすることはあり得る。
社会性が欠けた点をネットで補おうとしてもそれは無理だということだと思います。ネットでも弾かれて益々疎外感が生じて……秋葉事件の被害者に黙祷o(_ _*)o
投稿: ハスカップ | 2008/07/27 12:05
ネットで癒されるっていうのも有り得ないことではないし、そうした実例を見たことも大小それぞれ枚挙に暇がないと思いますが、現状では稀なギョウ幸と言うべきでしょうね。
実名環境なら可能性が高くなるかというと、実名でも攻撃的に振る舞う人は、また枚挙に暇がない程目にしてきましたから。
投稿: 町村 | 2008/07/27 12:20
メンヘラサイトで慕われていたブログでは、自殺を思いとどまって病院へ行ったのを何度も見ました。そこは管理人自身もメンヘラ(BPD)で理解があったし、人柄が鷹揚で集まった常連さんにも精神科医や心理療法士がいて、ボランティア活動に適していたと思います。
ただ、数年前、突然閉鎖されてしまい、まことに残念でした。
投稿: ハスカップ | 2008/07/27 15:00