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2008/06/21

media:「刑事」無罪でも賠償命令

読売新聞紙版に、加藤容疑者関連の記事と並ぶ扱いがされているこの記事は、要するに刑事上の業務上過失致死に無罪判決が確定した運転手に、民事上の損害賠償が認められたという内容で、見出しといい扱いといい、驚くべき事実という扱いがされている。

しかし、これってニュースなのか?

よく、人が犬を噛んだらニュースになるけど犬が人を噛んでもニュースにならないという。実際のところは犬に噛まれたというニュースが時々あるから、適切な喩えではないが、このニュースにも似たようなところがある。

民事で無過失が認められたのに刑事過失犯で有罪判決が出れば、それはニュースバリューが大きいが、その逆はむしろ当たり前のことにすぎない。

特に交通事故では、業務上過失致死の成立には過失が積極的に必要だが、民事損害賠償の運行供用者責任では無過失が免責要件の一つにすぎない。刑事で過失があるとは言えないと判断され、民事で過失がないとは言えないと判断されることは、取り立てて不思議なことではないのである。

ちなみに民事では強制保険があり、刑事にはその種の責任分散策はない。刑事責任は被害者救済のためではないが、民事責任は制裁より救済が主目的のところがある。
そういうわけで、過失判断も含め、民事と刑事とで責任成立要件が異なるのは当然なのだが、上記見出しを大きくつける新聞は、どうやらそうしたセンスを共有していないらしい。もちろんこうした記事を担当する人は、民事責任と刑事責任との成立要件が違うことくらいは理解しているだろうが、両者の結論が180度違うのはおかしいという感覚があるのだろう。

そして、重要なことは、そのような新聞社のセンスが、むしろ、世間一般の法意識というか法感覚に近いのかもしれないというところであり、一般の法意識と法的な常識とのズレがあることの一例なのである。
目前に迫った裁判員制度の下では、そうしたズレが増幅して噴出するのではないかと予想される。その先に起こることは何であろうか?

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コメント

 交通事故では、民事責任(運行供用者責任)が3条件付き無過失責任(しかも挙証責任の転換)であり、刑事責任では検察官の厳格な証明による立証責任という、民事と刑事の区別がつかないマスコミの不勉強を露呈する記事ですね。
 民刑不分離は18世紀に終わったはずなのに、マスコミは21世紀になってもまだやっている。

投稿: キメイラ | 2008/06/22 00:44

「重要なことは、そのような新聞社のセンスが、むしろ、世間一般の法意識というか法感覚に近いのかもしれないというところであり、……」

これは,先日,読売新聞に載った寄稿「『蛇足判決』の違憲判断」でも思ったことです。『司法のしゃべりすぎ』の元裁判官の寄稿です。法学徒ならば,憲法の単位は絶対来ないことが分かる程度の理屈なのに,世間では相当説得力あると読売新聞は考えているわけです。読売新聞だから仕方ないと言ってすむことでもない。

投稿: kisslegg | 2008/06/22 17:47

 これからは、これまで専門分野の領域だった学識も、一般の方に誤りなく平易に説明する時代になっていくようです。
 法学、IT、医学を問わず。

投稿: キメイラ | 2008/06/23 12:07

読売新聞の元記事はどうして載せてないのですか?運転手の過失がなければ避けれた事故なのですから、そもそも刑事で無罪判決が下された事自体がイカサマ判決です。何を的外れな意見を載せているのですか。

投稿: 一般庶民 | 2009/03/04 08:53

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