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2008/05/18

net-law:高市法律案骨子

高市私案はまだ死んでいないということだが、少し前から骨子が彼女のサイトに掲載されている。
奥村弁護士の見解で指摘されている点に注目である。

「この法律による削除義務が刑法・児童ポルノ法上の削除義務の根拠(不振政府作為犯)となる可能性があるので、大臣の命令を待っていれば処罰されないというわけでもないことに注意。裁判所はそんなに甘くない。」

そのほか、やはり奥村先生が引用しているところだが、民事のプロバイダ責任制限法の削除したプロバイダの責任制限に追加されるべき規定がおかれており、これはほとんどプロバイダ責任制限法の文言をなぞっている。

結果的に青少年有害情報ではなかったにもかかわらず、「青少年有害情報であると信じるに足りる相当の理由」があったときは損害賠償義務を免除されるという規定だが、骨子第二の定める多様な情報に該当するかどうかをプロバイダに判断させ、その判断が間違っていてもとりあえず削除さえしていれば刑事民事の免責が得られるという構造になっている。

プロバイダ責任制限法は、削除してもしなくても、グレーゾーンについては責任を問われないという構造になっていて、それなりに中立的だったのだが、高市私案は、グレーゾーンについて削除すれば免責、削除しなければ場合により刑事罰という規定である。

当然のことではあるが、プロバイダに対するセーフハーバーを提供する仕方が、プロバイダ責任制限法と全く違って、とにかく怪しげなものは削除させましょうという方向で作られているわけである。

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コメント

プロバイダ責任制限法のプロバイダによる運用が酷すぎたという現実が一方であります。削除になかなか応じない上に,名指しで特定の犯罪を犯したとのデマが掲載されても,その犯罪を犯していないことの公的な証明書を提示しなければ発信者情報の開示に応じられないと言い出す始末ですから。

投稿: 小倉秀夫 | 2008/05/18 14:41

グレーゾーンは削除しなくともOKとしてしまうと,女子中学生をターゲットとして大々的に援助交際のマッチングをするサイトについても,それが女子中学生の健全な発達にどのような悪影響を与えるのかについて公的な証明書が提出されない限り,一切フィルタリングせず,どんどんその種のサイトへと女子中学生を誘ってやるぜと,携帯キャリアたちは張り切ってしまうのではないかと危惧してしまいます。

投稿: 小倉秀夫 | 2008/05/18 14:44

 疑わしきグレーは削除という業界慣行ができると、一時出版で流行った「言葉狩り」となって小説や随筆レベルでも委縮効が始まりそうです。
 クロは削除・シロは表現保護といきたいですが、そのグレーゾーンの処理が問題だと思います。

投稿: ハスカップ | 2008/05/18 19:44

>削除になかなか応じない上に

グレーのものをグレーのまま削除しろと言っても意味がないでしょう。

ブラックという証拠込みで削除しなかった場合と、
グレーのまま削除しろと言われて削除しなかった場合を切り分けることをいい加減覚えてください。

投稿: サスケット | 2008/05/19 13:40

私的には、グレーの問題は二つの話を含んでいると考えています。

一つは解らないときにどうするかという指針がないということだと思います。
迷ったらフィルタリングか、迷ったらフィルタリングしないかという問題もあるのですが、まずは、基準を明確にしてグレーを出来るだけ無くすようにする必要があると思われます。

もう一つはグレーというものは流動的ということです。グレーであったものを、フィルタリングするようにすれば、従前は白かったものがグレーに見えてきてグレーになることもありますし、グレーを白とすれば従前クロだったものがグレーに見えてくるということもあります。

少なくとも使える明確な基準というのが(もし、立法をするのであれば)不可欠と思っています。

投稿: Toshimitsu Dan | 2008/05/21 16:14

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