news:世帯主が拒めば別居中の妻に保険証がでない
毎日jp:保険証:別居妻に交付せず 離婚訴訟中、夫が要請 福岡
驚くべきことに、この事件、家を出て連絡先も教えない夫が、家にいて離婚を拒んでいる妻による国保「遠隔地証」交付申請に対し、「交付対象は世帯主の夫に限る」との規則をたてにして交付を認めないように主張し、市がそれを認めたというのである。
ねじれ現象ともいうべき事例である。
上記の記事の最後に、井上英夫・金沢大教授の話が出ているが、問題はそれに尽きる。
本来国民健康保険は国民個人個人が被保険者であるはずのところ、世帯単位で管理する都合上、世帯主を交付対象にしている。
ところがその管理の都合で決めたルールが文脈を離れて一人歩きし、あたかも世帯主に交付を受けるかどうかの判断権限があるかのような事態に至っている。かつての戸主ではないのだから、そんな権限を世帯主に認める趣旨では全くないのである。
管理のための便宜的取り扱いがいつの間にか実体的権利のようになってしまうというのは、江戸時代の御側用人の権力を思い起こさせるところだが、制度の本質を理解しようとしないルール解釈の弊害である。
法律学はこういうときに、ルールが持つ本来の趣旨から解釈をする。参考になる例では、夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消せるという民法754条で、婚姻が実質的に破綻しているときは取消権を認めないという解釈が一般化している。これなども、法律の本来の趣旨が正常な婚姻関係における自律権を尊重するところにあるのであって、婚姻関係が破綻に至れば、たとえ形式的に婚姻関係があったとしても、その適用の根拠が失われるという実質的趣旨解釈である。
もっとも全国津々浦々の市職員がてんでばらばらに実質的趣旨解釈をし始めたらどうなるかという問題もあるのだが、それにしても、行政庁の職員にも法解釈上の常識的感覚というものが共有されて欲しい。
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