spam規制強化案--特商法の場合
spam規制強化案判明というエントリでは「広告主に対する行政罰を規定して、スパム発信についての過料を1通5000円くらいで取り立ててはどうか?」と書いたが、本日の報道ではオプトイン規制を広告主にかぶせて制裁もするという方針が伝えられている。
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経済産業省は迷惑メールの広告主に対して、懲役刑や罰金などの刑事罰を新設する。
最大で懲役1年、罰金200万円を科すことが柱で、経産省は3月上旬に特定商取引法(特商法)の改正案を通常国会に提出して、年内の施行を目指す。
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疑問の第一は、この罰則の適用が直罰なのか、それとも経産省が中止命令などの何らかの行政処分を下して、それに反する場合の罰則なのかという点。
直罰では萎縮効果が強く出すぎるだろうと思われるから、まず流通業界は絶対反対だろうし、そうなると経産省的にも踏み切れず、結局間接処罰ということになるのではないか?
仮にそうだとすると、記事の最後に紹介されている「違法な迷惑メールの広告主を特定するには膨大な作業が必要だ。人手が限られている中で、法律の施行による迷惑メールの抑止効果がどこまであるか疑問視する声」が現実の問題となる。
そこで思うのだが、消費者団体や例のホットラインセンターなどに、スパムメール対策業務を委託して、消費者からの不招請メールの通報を受け付けたら、これをとりまとめて経産省の担当部局に送付し、経産省が仮の送信中止命令を下すようにしたらよい。
そして仮命令に対して1週間以内に異議の申し立てがなければ、本命令の効力を生じることにすればよい。
(ついでに、法人格偽装に備えて、仮命令・本命令の効力も代表者や実質的支配者に対する属人的な効果を備えるように設計すればよい)
まともな業者は、仮命令に対して送信を止めるか、または異議を申し立ててオプトインを証明するだろうし、そうでない業者は罰則の適用をもって防止する必要がある。
もちろん現在存在する迷惑メールの通報窓口に、とりまとめと経産省担当部局への送付の任務を担わせることでもよいのだが、これまでの行政処分の実績を見る限り、そちらのルートでは効果が極めて限定的で期待できないように思うのだ。
そのような感想を報道からは思い浮かべるが、いずれ正式な改正案が明らかになったら、また考える。
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コメント
ごぶさたしてます。大阪の川村です。
各社の報道の表現もどうかと思ったので、自分のブログにも書いたのですが、迷惑メール防止法と異なり、特定商取引法は、そもそもメール送信者の規制ではなく、広告主への規制ですので、現行法でも、間接罰の意味では懲役刑も含めて刑罰規定があると思います。
直接、送信行為を犯罪としたなら画期的だと思いますが。
投稿: 川村哲二 | 2008/02/28 22:31
全くおっしゃるとおりだと思います>川村先生
投稿: 町村 | 2008/02/29 00:53