news:検察庁は公益の代表者の地位を捨てるのか?
読売online:取り調べの録音・録画「裁判員裁判に有効」…最高検が中間報告
この記事を読んで伝わってくるのは、検察流の一部録音録画が被告人の否認を封じ、有罪立証に有効だという評価だけであり、そもそもが実体的真実に適った適正な裁判を実現しようという姿勢は感じられない。
検察はもちろん訴追官であるから、訴追した被告人について有罪判決を得ることが目的なのは不思議ではない。しかし、検察官は公益の代表者であり、無辜を罰してはならないということも追求するべき存在なのである。裁判所のような中立性はないが、実体的真実に適った裁判を追求すべきことは当然で、真実罪を犯した者に刑罰を与えると同時に、真実は罪を犯していない者に刑罰を与えないようにすることも、検察の本来的任務である。
それ故、検察庁からの無罪申立てがあり得る。
取り調べ過程の可視化も、実体的真実に適った裁判を実現するためにやっているのであって、都合のいい場面だけを録画することで有罪立証に役立つから賛成というのでは、その目的にはそぐわない。
真実はどうでもよくてとにかく有罪立証さえできれば、冤罪の可能性があっても知ったことではないと言うことになるではないか。
法務大臣によれば、鹿児島選挙違反事件のような事例でも冤罪とは呼ばないのが検察クオリティらしいし、あの事件でもさんざん責め立てた場面は闇に葬って最後に自白した場面だけを録画しておけば、有罪になったかもと、ほぞをかんでいるのかもしれない。
それでは公益の代表者とも法と正義の守り手ともいえないのである。
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コメント
いままで取調官の証人尋問や自白調書記載内容の慎重な吟味を経て任意性や信用性の有無を判断してきたのに(弁護士先生も志布志事件などで熱心に弾劾してきたところ)、簡便な方法で任意性を立証しろと裁判員裁判法で規定されてしまった(最高裁の意向?)も一因ではないでしょうか?
投稿: ハスカップ | 2008/02/17 11:24