Bar:橋下の弊害・懲戒事件が前年比7倍!
Nikkei.net:弁護士懲戒請求7倍、07年9585件・橋下氏の呼び掛け影響
後先考えないタレントが弁護士資格を振り回すと、こうなるという見本である。
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弁護士に対する2007年の懲戒請求が9585件になり、前年の約7倍に上ったことが20日、日本弁護士連合会のまとめで分かった。うち8095件は山口県光市の母子殺害事件で殺人などの罪に問われた元少年の弁護団に対してだった。
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従来は、2004年より2006年の3年間の累計で、新受件数は3827件、うち懲戒に至ったのは183件、4.8%にすぎず、95%は懲戒不相当などで終了している。
懲戒申立てはまず綱紀委員会にかけられ、そこで懲戒委員会にかけるのが相当かどうかの審理が行われ、懲戒委員会にかけるのが相当という結論が出ると、今度は懲戒委員会で懲戒の種類等の審理にかけられる。
懲戒委員会にかけられた件数は319件なので、申立ての90%以上は綱紀委員会段階ではねられ、懲戒委員会では過半数が懲戒処分に付されている。
この数字は身内に甘いという見方も可能だが、数字の上だけから判断するのは早計だ。
実際の申立ての中身を見ると、身内に甘いから処分が少ないというのは部分的に当たっているかも知れないが、やはり大部分が根拠のない申立てだったり、不幸な行き違いだったり、依頼者に過大な期待があったというケースだったりする。ただ客観的に見れば根拠がなくても、申立人にとっては、真摯な、人生をかけた申立てというケースが大部分であり、無責任に気軽に申立てをするということは、普通はあり得なかった。
ところが去年の8000件は、お馬鹿なタレント弁護士の無責任な煽りに、これまた無責任に乗せられてしまった申立てである。
その弊害は、直接的に膨大な申立てを処理しなければならないというところにとどまらず、将来的に悪影響を及ぼすだろう。
これまでは、根拠のない申立てと思いながらも、申立人の意向を電話や面談で直接確かめ、被申立人弁護士に事情聴取し、反論を書面で書いてもらい、両者の対立点とこれに対する評価をまとめた報告書を一件一件作ってきた。
このような丁寧な処理は、大量申立てでどれも同一のテンプレートに依拠しているなどという場合にはやることはできない。また申立人だって、気軽な署名運動とかカスタマー窓口に文句をいうくらいのつもりで申立てをしたのに、どういう趣旨かをあれこれ聞かれたり、個人情報が事件関係者につたわったりするのは予想外で困ると思っていたわけで、申立ての中身を丁寧に審理してもらうことなど期待も予想もしていないわけである。
結局、どうせ根拠のない申立てなのだから、一件一件内容を精査したり対象弁護士の反論を聴取したりすることなく却下するということになり、そのような前例が大量に生み出されてしまったというわけだ。
#本当にそう処理されたかどうかは、実は知らないのだが、数から見て、従前の取り扱いを踏襲していれば、申立てが殺到した弁護士会では特別に人員を増強でもしないと対応できないはずで、きっと同一申立てはまとめて処理ということをしたのだろうと想像している。それでも、申立人は違うのだから連絡を付ける手間は省けないものがあるのだが。
少なくとも事件処理に要した費用(積極損害のみならず、処理を強いられた弁護士の逸失利益も)は、各弁護士会がとりまとめて大阪府知事に請求しても良さそうに思う。
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コメント
名誉毀損・削除要求でもどこまで本気なのか疑わしいという事例にぶつかりますね。
投稿: 酔うぞ | 2008/02/21 13:24
懲戒請求というもの自体が世間に広まって良かったと思いますが。
広まれば、悪い使われ方もあります。
でも、良い使われ方もあります。
良い使われ方をして貰うには、まず知ってもらうこと。
そういった意味では、プラス材料だと思います。
投稿: うつぼっち | 2011/05/10 23:52