arret:わいせつは形式基準で計れない
最判平成20年2月19日(PDF判決前文)
asahi.com:男性器映る写真集「わいせつでない」 最高裁判決
ご存じ、メープルソープ写真集がわいせつかどうかで争われた事例で、最高裁が正義の鉄槌を下した。
この事件の弁論に関するエントリ
メープルソープの写真集
ロバート・メイプルソープ写真集 (Parco vision contemporary)
Mapplethorpe
Flowers―メイプルソープの花
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第三小法廷は(1)メイプルソープ氏は現代美術の第一人者として高い評価を得ている(2)写真芸術に高い関心を持つ者の購読を想定し、主要な作品を集めて全体像を概観している(3)性器が映る写真の占める比重は相当に低い——などと指摘。作品の性的な刺激は緩和されており、写真集全体として風俗を害さないと結論づけた。
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「本件写真集が主として見る者の好色的興味に訴えるものと認めることは困難」ともいっている。
ただし、
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堀籠幸男裁判官は「男女を問わず性器が露骨に、中央に大きく配置されていればわいせつ物だ。多数意見は写真集の芸術性を重く見過ぎている」との反対意見を述べた。
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正直言って、この訴訟で問題となっている写真集がわいせつかどうかには関心もないし、あまりよく知らない。10年以上も前から争われてきたことは知っている。
ここで注目なのは、わいせつかどうかの判断基準が、そう一筋縄ではいかないということである。
単に性器が露出しているからとかしていないとか、一昔であればヘアがあるとかないとか、そのような形式基準で割り切れる問題ではないし、それが適用されて規制されるのは表現行為である以上、憲法の表現の自由の保障の限界という問題でもある。
それなのに、軽々しく性器がでてればダメとか機械的基準を使って他人の表現行為を規制しようという輩があちらこちらに跋扈していることには、非常に大きな問題があるというべきである。
そしてそれが警察の行為になればもちろん、公権力の指導のもとで公権力と同様の作用を果たす民間組織であっても、他人の自由に対する重大な侵害であることを自覚した上で、規制目的をぎりぎりまで詰めていき、どうしてもやむを得ない場合に限った規制にとどめるべきなのである。
念頭にあるのは、もちろんあの蘇民祭を規制しようとする警察であったり、性的表現をとにかく排除してしまおうとするプロバイダやフィルタリング業者、それらを煽ったり圧力をかけたりする某協会とか某官庁なのだが。
追記:判決文を実際に読んでみたが、判例変更として大法廷に回付しなかったことは疑問の余地を残すものである。
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コメント
「わいせつ表現」については、国によってマチマチなんですけど、ネットでは大きなファイルもイケイケですよね。
税関で有体物だけ取り締まってもしょうがないような気がします。
そんなこと正面から言っても通用しないですけど。言ってみたこともありますが。
名古屋高裁H18.5.30 判例タイムズ1228P348
所論は,児童ポルノの外国からの輸出を処罰する児童ポルノ処罰法7条6項は,有体物の場合のみを処罰する点で不合理な差別であって憲法14条1項に違反し無効であり,また,有体物に化体した情報の流通についてのみ重く処罰することは表現の自由に対する不当な制限であって憲法21条に違反し無効であるから,原判決は違憲,無効な処罰規定を適用した法令適用の誤りがある,というのであるが,児童ポルノ処罰法7条の法意に照らし,同条6項が憲法14条1項,21条に違反しないのは明らかであり,この点につき原判決には法令適用の誤りはない。所論は独自の見解であり,理由がない。
投稿: 奥村徹(大阪弁護士会) | 2008/02/19 12:33