trial:私的司法取引
暴行傷害犯が被害者と示談し、「100万円の示談金のうち30万円をまず払い、残額70万円は執行猶予判決が出たら払う」という条項で和解した。
これは有効か?
ボツネタ経由で知ったヤフーニュース:執行猶予で示談金残額支払い? 弁護士「話が違う」と憤慨
この中で被害者の供述調書では「残額も支払わなければ勘弁しない」となっており、これに弁護士が「話が違う」と怒っているという。
その通りだとすれば、要するに執行猶予判決を得るための情状として示談成立をアピールしたかった弁護人として、その訴求力が弱いといって怒るのは無理もない。
また、条件付き和解契約は原則として有効で、その停止条件が執行猶予付き判決がでることとなっているのも、違和感を感じないではないが、公序良俗違反とはいえないと思う。
違和感の源は、司法取引一般に対する違和感と共通するのだろうが、罪を認めて反省し、また他人に生じさせた損害を償ったということで与えられる執行猶予を、逆にそれが得られれば金を払うという取引に用いているところなのだろう。要するに、刑罰の軽重は、「反省」とか「陳謝」といった内心の誠実さによって左右されるべきであって、金銭取引により左右されるべきではないという法感情が、なんとなく落ち着き悪さを感じさせているのである。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント