satoshologより、現代の氏名冒用訴訟
民訴の勉強をするものにとって格好の教材がsatoshologで紹介されている。
原告側氏名冒用訴訟で、一審は請求認容となり、その控訴状が原告本人に送達されて発覚したというものである。
控訴審は、冒用の事実を確認し、訴え却下。
いかなる訴訟要件の欠缺と解するのかは議論の余地がある。
当事者の確定の判断基準として表示説を採用する限り、当事者は被冒用者なので、当事者適格はある。無権代理人による訴訟行為は無効のはずだが、訴え提起行為とこれに基づく判決は有効に成立したと解さざるを得ず、すると原告の意思に基づかない訴えという訴訟要件欠缺なのだろうか?
仮に行動説的に、冒用者が当事者であるということになるのなら、当事者適格の欠缺で却下というのが素直に出てきそうである。
satosho先生は、さらに次のように述べる。
「確定してしまったあとはどうなるか。冒用原告の名前で強制執行に及んだときに請求異義は出せるか。既判力は働くか。これが一昔前の民訴の議論であった。しかし、既判力の有無に関わらず、請求異義は出せるし、被告から再審の訴も提起できる、とするのが最近の考え方のようだ。」
冒用者が原告の名前のまま強制執行に及んだときには、被告=債務者が請求異議訴訟を提起できるという趣旨であろうか?
執行関係でも、債務名義に当事者と記載された者が執行請求権を有するので、冒用者が原告(債権者)の名で執行開始を申し立てて看過されて開始決定がでた場合、手続的な違法を主張できるのではあるまいかと、ちょっと思う。
少なくとも被冒用者が冒用者の執行に文句を言うには、上申書みたいな事実上の申立てになるのであろうか。
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コメント
matimura 先生、トラバありがとうございます。
なるほど被冒用者との関係での記述は必要ですね。私は被告・ゴルフ場側がどうするか、という意味で考えておりました。被冒用者ご本人としては、執行段階で文句をいうには指摘のとおり上申書のようなものしかないでしょうね。
ちょっと舌足らずな面があったので私の文章、訂正しておきます。
よいお年をお迎えください。
投稿: satosho | 2007/12/30 21:11