arret:ウェブの閲覧履歴が証拠の一部となった事例
判示事項は「有罪認定に当たって必要とされる合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証とは,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合を含む趣旨であり,このことは,直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで何ら異なるところはない」というのもだが、興味深いのは、ウェブの閲覧履歴が認定根拠となっているところである。
この被告人は、爆発物を送りつけて離婚訴訟中の妻の母親を殺害しようとしたらしいが、その爆発物製造方法について、「発生する8日ほど前までに,自宅のパソコンからインターネットを利用して,TATPを含む爆発性物質の生成方法や起爆装置の製造方法等を記載したサイトにアクセスし,閲覧しており」と認定されている。
これはつまり、自宅のパソコンを押収されて、その閲覧履歴をフォレンジックツールで復元して証拠としたのであろう。
また、「封筒にちょう付されていた差出人を示す紙片は,クレジットカード会社のホームページの高松支店の地図付き案内ページを利用し,これをカラープリンターでラベルシートに印刷して作成されたものであるところ,被告人は,本件爆発事件発生の6日前に上記ホームページを閲覧していた」とも認定されている。
これも同様である。
つまり、犯罪者が、ネットの豊富な情報を自室で一人きりで閲覧し、それを犯罪に利用した場合、たとえキャッシュをクリアしたり閲覧履歴を消去したりしても、パソコンを押収されて解析されれば、たちどころにその痕跡が現れるというわけである。
あ、本件の被告人は無防備にも残したままだったという可能性もあるが・・・。
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コメント
何を証拠にして認定したかは一審判決の証拠の標目まで遡らないとわからないのですが、刑事確定訴訟記録法によれば記録は一審の裁判所に対応する検察庁で保管しているので、
事件番号 平成19(あ)398
事件名 爆発物取締罰則違反,殺人未遂被告事件
裁判所 最高裁判所第一小法廷
裁判年月日 平成19年10月16日
裁判種別 決定
結果 棄却
原審裁判所 高松高等裁判所
原審事件番号 平成17(う)392
原審裁判年月日 平成19年01月30日
では、地裁が特定できません。(四国の4庁に絞られますけど。)
報道の被告人氏名でググると、高松地裁H17.10.4であることがわかります。
投稿: 奥村徹(大阪弁護士会) | 2007/10/18 22:42