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2007/09/28

news:マスコミの事件報道に最高裁参事官が注文をつける

asahi.com:事件報道に配慮を 最高裁参事官が要請 マスコミ倫理懇

記事によれば、最高裁刑事局の平木正洋総括参事官が、裁判員に「容疑者は犯人だ」という予断を与える報道をしないよう配慮を求めたという。

平木参事官は、一個人の私見として、以下の6項目を具体的に問題のある点とした。
・容疑者が自白していることやその内容
・容疑者の弁解の不合理性を指摘すること
・犯人かどうかにかかわる状況証拠
・前科・前歴
・容疑者の生い立ちなど
・事件に関する有識者のコメント
そして、「これらを報道することについて、裁判員に対し、容疑者が犯人だという予断を与える可能性があるとして、「公正な裁判のためには一定の配慮が必要だ」と述べた。」

しかし、裁判員制度が始まり、裁判員が予断をいだくことなく裁判に臨むことが望ましいことであることは否定しないが、それが我々の知る権利に寄与する事件報道を制約する理由になるというのは、本末転倒の議論である。
報道が裁判員制度に邪魔だと考えていることは分かるが、それは一個人としても言うべきことではない。

マスコミの事件報道に対する批判の方向としても、少々的外れのそしりを免れない。
容疑者・被告人が犯人だという予断を生じさせるのは、裁判員制度があってもなくても問題なのだが、だからといって上記の各点が問題になるわけではない。
マスコミの問題性は、警察発表をとりあえず真実と発表し、捜査機関が意図的に流していることかもしれない内容を無批判に受け入れてしまうやり方である。
それから、被害者の感情や社会的な義憤に迎合し、かえって煽り立てるような報道姿勢も大きな問題である。
こうした報道姿勢が予断と偏見に充ち満ちた世間の見方を作り上げるのが問題なのであり、裁判員もその一部として予断を植え付けられるにすぎず、要するに裁判員の予断が独立して問題なのではなく、マスコミが世間に発する予断偏見の問題性の一部に裁判員もあるにすぎない。

しかし他方で、犯罪を犯したと疑われる人について、マスコミが独自に様々な観点から調査し、取材して報道することは、必要なことである。平木参事官が挙げる6項目は、全部、自制すべき点ではなく、積極的に明らかにして欲しい点である。もちろんそこには、家族のプライバシー尊重とのせめぎ合いがあるわけだが。

そういうわけで、裁判員制度の推進のためになすべきことは、マスコミに自制を求めるのではなく、報道の影響を受けた人が裁判員候補になることを前提に、予断排除のための手続的工夫を、陪審選定手続や評議における説示などを通じて実行していくこと、それしかないのである。
後は、アメリカのように、裁判員をホテルに缶詰にしたり、地域的な問題があればより被害者感情の少ない土地に移送するとかの方法もあり得るところである。

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<裁判員制度>「予断与える恐れの報道」で6項目 最高裁           9月 [続きを読む]

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