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2007/09/09

justice:電子速記「はやとくん」


立命館大学で行われた司法制度改革と先端テクノロジィ研究会の公開セミナーに、「裁判員裁判にすぐ役立つ電子速記」というセッションがあった。

電子速記システム「はやとくん」については、このブログでもcourt_techno:音声認識なるか?の記事やradio:裁判所速記官制度を守る会の石渡さん登場の中で触れているし、電子速記研究会ブログもある。

しかし、日本の電子速記デモンストレーションを見たのははじめてであった。

今、というかずいぶん前から、最高裁は「速記官」制度を廃止することとし、速記官養成制度は既に実施されなくなっている。
しかしながら、裁判審理において、証人尋問や本人尋問、鑑定人尋問などの記録には語られたことを記録して参照することのできるシステムが不可欠であり、これまではそれをステンチュラという速記機械で行っていた。最高裁は、この人手を省くため、証人尋問等は録音して、必要に応じて外注して反訳するという方式に代えようとしていた。少なくとも民事訴訟法は平成10年施行の現行法からそういう方向が明文化されていた。

 しかし、新民訴は同時に集中証拠調べを導入し、さらに計画審理方式も導入している。他方刑事訴訟では、裁判員裁判が導入されることになっている。これらの新しい方式で審理のスピードが上がり、集中審理ともなると、証人尋問調書が即日できあがることが望ましい。というより不可欠になってくる。
 証人尋問の記録が即日できるためには、リアルタイムスクリプティングが必要になる。音声反訳ではそれは不可能だ。そこで、音声認識システムができないかというのが裁判所の意向であった。確かに音声認識も技術の発達でかなりの所までは行くが、多数人が代わる代わる発言し、しかも肝心なところ(自分にとって都合の悪いところとか)は小声になったり早口になったり、興奮したり泣き出したり、頷いたり首を振ったり、機械が認識できる標準的な発話を保つことが困難な場所が法廷であり、見果てぬ夢といってもよい。
 リスピーク方式といって、音声を聞き取った人間が一度発話し直して、それを音声認識に欠けるという方式ならかなりの精度が期待できるが、これでも校正者は必要であるし、コストはかなり高いものが予想される。
 その点、従来の速記であれば、入力から文字に反訳するプロセスは当然ながら電子化できるので、比較的容易にリアルタイムスクリプティングに発展させることができる。

 現にアメリカではコートレポータ(裁判所速記者)が電子速記を当然のように使用して陪審裁判にも利用している。この点は、2000年にシカゴで模擬証言録取(デポジション)を見学したが、その際にも当然のように用いられていた。

 この冬に訪米した際に見学した法廷およびCourtroom21でも、視聴覚障害のある陪審員のためのサポートが課題となっており、電子速記はそのための有力ツールとなりうるものであった。リアルタイムスクリプティングができれば、聴覚障害者が裁判員になってもついて行けるし、出力を点字にすれば視覚障害者にとっても理解が進む。

 なお、ビデオ録画による記録も有力な手段であるが、記録としては検索機能の高いビデオと文字データとが両方ないと不完全である。この意味で、ビデオ録画記録は電子速記に代わるものではなく、電子速記に付け加えられて高機能化するものと位置づけられる。

裁判員裁判が実施されるまで後1年半。せめて証人尋問の同時文字化くらいは備えないと十分な審理はできないので、最高裁は早急に「はやとくん」導入を決定すべきである。

(参考)
当日配布されたDVD「裁判員制度を支える速記官〜充実した評議のために〜」
裁判所速記官制度を守る会ブログ
 特に[陪審員選任手続きも速記官立ち会い]にある「速記はすべての手続きについてするんだと説明を受けました。/陪審員の選任手続きも、後になってその手続きが公正に行われたかが問題になることがあるとのことで、速記は欠かせないということでした。」
 および[最高裁の音声認識開発現状に現場の声]が読み応えのある注目記事である。
ラジオ大阪に石渡さんが出演した時のビデオ(ページ内にリンクあり) ここでもデモが見られる。

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コメント

さっそくすばらしい記事にしていただいてありがとうございます。
ときどきのぞかせていただいていたブログでしたが、やっと御本人と結びつきました。

投稿: Kimi | 2007/09/11 01:14

どういたしまして。
もっといっぱい動画を撮りたかったのですが、古いデジカメでバッテリがすぐダメになってしまいます。

投稿: 町村 | 2007/09/11 06:49

デモンストレーションをした者です。北海道にいらっしゃるということで,ごあいさつを…と思っているうちに見失ってしまって失礼してしまいました。
またどこかでお会いする機会がありましたら,よろしくお願いいたします。


(今週末9/21も,札弁の福祉関係の大会に字幕を提供します。)


投稿: ★ 空 ★ | 2007/09/11 22:57

それは、失礼しました。
札幌弁護士会を拠点に、またお会いすることがあるかもしれません。

投稿: 町村 | 2007/09/12 00:06

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