arret:一部請求訴訟で残部は催告継続
高松高判平成19年2月22日(PDF全文)
数量的な一部を明示して提起された交通事故に基づく損害賠償請求訴訟の係属中に請求が拡張された場合において,訴訟提起の段階では,事案の内容や予想される争点,それまでの交渉経過等にかんがみて一部請求とされたものであって,特段損害費目を特定して請求額を限定したものではなく,当初から,交通事故によって被った全損害につき自動車損害賠償保障法3条本文に基づく損害賠償請求権を有することを主張して,その内容及び額につき主張立証をしており,訴訟の経過や1審判決の結果等から予想される最終的な認容額に対応して請求を拡張することも視野に入れていたもので,相手方もそれを容易に予測することができる状況にあったなど判示の事実関係の下においては,上記訴訟の提起及び係属により損害賠償請求権の残部について民法153条の催告が継続していたものというべきである。
明示的一部請求の場合、残部請求権は訴訟物になっておらず、無関係だというドグマが貫徹されていないことを示す一例である。
もっとも、信義則による残部請求却下と、その理由に前訴で残部請求権も審理の対象だったということをあげる最高裁判決の前では、もはやそのようなドグマは存在しないといっても良いかもしれず、その場合は、存在しないドグマにしがみついて中途半端な解決をした例と位置づけることになるかもしれない。
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