LAWYER:容疑者自殺の意思を告げられた弁護士は?
弁護士倫理の格好の素材である。(末尾にアンケートがあります)
毎日インタラクティブ:栃木・容疑者自殺:弁護士は自殺の意思把握 県警に伝えず
上記記事のケースでは、逮捕された容疑者が接見に訪れた弁護士に対し、「自分の身は自分で始末をつける」「看守に見つかると没収されるので、遺書を(留置場の)畳の下に入れておく」と話したという。また自殺直前の接見でも容疑者は「疲れた」と繰り返し「妻と次男の眠る墓に早く入りたい」と話していたという。
これに対して弁護士は、「死ぬ、死なないは人間の究極の尊厳。本人意思を尊重した」として県警に伝えなかったわけである。
自己決定権や死ぬ権利の尊重ということなのだろう。この立場からすると、自殺防止の措置をとるのは悪しきパターナリズムということになろうか。
依頼人の秘密を守る義務という観点も関係してこよう。
しかし他方で、刑事裁判の遂行により真実を明らかにし、正義を実現するという観点からは、容疑者の自殺というのは絶対避けるべきだし、消極的にせよ自殺を助ける行為は司法妨害とも評価されよう。
そうした公益とは別に、自殺はさせないようにするべきだという価値観からも、この弁護士の行動は問題視される。
このブログをご覧の皆さんは、どう考えられるか?
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コメント
県警に敢えて伝えなかったのではなく,伝えるべきだとは思いもしなかったのではないか,と誤解される虞の方が高くはないでしょうか。
投稿: kissless | 2007/08/09 08:19
すみません。そのコメントの意味がちょっと分かりかねるのですが。
投稿: 町村 | 2007/08/09 08:29
接見が終了したのにすぐに容疑者を迎えに行かず,空白の時間を作ってしまった県警の管理責任を弁護人になすりつけているだけのように思います。
投稿: eno | 2007/08/09 11:13
はあ、そうですか。
弁護人に誰か責任をなすりつけていますか?
投稿: 町村 | 2007/08/09 12:45
自殺は精神的な病であり、少しでも自殺者を減らそうという社会の動きと逆行しているのでは、と思います。
「死ぬ、死なないは人間の究極の尊厳。本人意思を尊重した」と仰っていますが、尊厳死のようにある程度コンセンサスが得られているものと、一般の自殺を一緒に扱うのは乱暴であり、かつ、弁護人の価値観で決定してよい領域を超えているように私は思いました。
投稿: SatoRue | 2007/08/09 14:01
警察の管理責任に一言もお触れになっていない反面,この弁護人の行動は問題視されるとの書きぶりからそのように受け止めましたが,誤解でしたか。
弁護人としては,守秘義務があるのに被疑者の意思に反してその接見内容を警察に話すことはできないものと考えています(他害のおそれがあるなど緊急避難的な場合は除いて)。被告人の防御権を保障するために秘密交通権があるわけで,その放棄は弁護人にとって自殺行為です。もちろん,弁護人としては,自殺を思いとどまるよう説得や働きかけを最大限試みることはいたします。
でも,接見室で弁護人に話した内容が被疑者の意思に反しても弁護人によって警察に伝えられることがあるということになれば,被疑者は弁護人に対しても口を閉ざしてしまいます。自殺したいというそぶりも見せなくなるでしょう。そのあたりまで見通しをもっていただければと思う次第です。
投稿: eno | 2007/08/09 15:29
上記コメントが長文になり失礼いたしました
投稿: eno | 2007/08/09 15:40
このエントリは、自殺の責任が誰にあるかを問題にしているわけではありませんので。
拘束された容疑者が自殺するかもしれない、するに違いないという疑いないし確信をいだいた弁護士はどうすればよいかを考えてみようと言うことです。
enoさんが書かれる「そのあたりまで見通しをもって」考えるべきでありましょう。
投稿: 町村 | 2007/08/09 23:28