jugement:要素の錯誤が認められた例
保証人の保証契約について、要素の錯誤が認められた事例である。ただし、保証人は信用保証協会。
被告(銀行)の貸付について借受人の借入金債務を保証し,その保証債務を履行した原告(信用保証協会)が,被告に対し,保証契約に要素の錯誤があると主張して代位弁済金につき不当利得返還請求をした事案において,原告は,借受人に企業としての実体がないのに企業実体を有すると信じていたということができるから,上記保証契約はその重要な部分に要素の錯誤があり,かつ,原告に重大な過失があったということはできないとして,原告の被告に対する請求を認容した事例。
事例判決ではあるが、不法行為請求権による相殺の抗弁とか、訴外人の詐欺行為が絡んでいるとか、教材や問題に加工するにはちょうどよさそうな事例である。
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コメント
この判決は、実務に衝撃的な影響を与えると思いますよ。
実際の話をしますと、信用保証協会付きの顧客というのは、零細な会社、自営業者が多く、審査能力は銀行より信保協会の方が、はるかに上なんですよね。それに信保協会は保証のプロ。それが、信保協会の方で、信用調査を行わず保証書を出しておきながら、「企業実態がないから保証は無効」とはプロの言うことかと思います。「信用調査をしなかったのは、過失だが、重過失ではない」ん、、そうですか。
しかも、本件では一旦協会が否決した後、それが銀行経由で債務者に伝達され、その後債務者と協会の直接交渉で保証を決定した(P12)というケースですから、銀行としては「そりゃないよ」という感じです。
銀行としては、信用調査をしなかった協会職員に不法行為の損害賠償、協会に使用者責任を問うべきでしょうか?
投稿: 銀行関係者 | 2007/08/16 10:13
なるほど、注目すべき判決ですね。
ちなみに協会に対する不法行為責任の追及は、相殺の抗弁としてなされてまして、錯誤無効が認められる以上不法行為は成立しないとされています。
投稿: 町村 | 2007/08/16 10:53