jugement:弁護過誤責任が認められなかった事例
説明を十分にせずに条件付きの証拠保全を受任し,証拠保全を行わなかった弁護士の行為は相当ではないが,本件事実関係の下では違法性があるとまではいえないとした事案
保育所の労災事故に医療過誤と弁護過誤とが重なった、民法上は興味深い事件だが、訴訟は弁護過誤責任の追及に絞られている。
保育所の事故についての責任追及交渉、労災申請の助言等と、医療過誤についての証拠保全とを受任した弁護士が、いずれも煮え切らない態度を取り、まともに説明しようとせず、電話に出ようともしないまま10年の消滅時効を迎えてしまったというのが原告側の主張である。
これに対して裁判所は、交渉をしていないのは症状固定を知らなかったためであり、助言は実質的に十分なことをしていたと認定した。また医療過誤関係では、証拠保全をしようと提案して受任し、着手金も受け取ったにもかかわらず、その委任内容は必要があると被告が判断したときは証拠保全をするというものであり、本件では必要がないと考えられる状況にあったので、証拠保全をしないでいたことに違法はないという。
原告は極めて釈然としないであろう。説明不足であったことは認定されているので、説明義務違反により多少の慰謝料請求は認められて然るべき事案かと思う。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- フランスの司法信頼度調査2024(2025.11.07)
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)


コメント
「医療過誤で証拠保全しないと弁護過誤」だという意識でやってますけどね。
投稿: 奥村徹(大阪弁護士会) | 2007/08/02 16:50
奥村さんのような弁護士さんの態度を期待しているのが、一般人である依頼人だと思いますが。
それにしても単純に、
『原告は被告の事務所に何十回も電話を架けたが、裁判中、外出中、来客中などと言われて連絡が取れず、事務所から指定された30分後に再び電話し直すなどしても、被告が不在で連絡が取れないことが度々あった。被告とは、10年間の間に面談が2回、電話が2回しか満足に連絡が取れなかった。』(これについて被告側も反論しているが)
これはひどいなあと感じました。
結局、このような信頼関係であったから弁護過誤事件に発展したのでしょう。
投稿: ben_kowa | 2007/08/02 21:39
医療過誤事件の場合、
証拠保全
↓
協力医のコメント
↓
方針決定(訴える?訴訟外の交渉?請求しない?)
という、準備の手間と費用が依頼者のハードルになっています。
これ省いてやってくれという相談も多いし、被害を受けた人に費用を負担してもらうのはしのびないのですが、これを省いて訴えると負ける確率が高くなります。
投稿: 奥村徹(大阪弁護士会) | 2007/08/03 06:18
私的には、40日以内に手術を受ければ後遺症が残らない前頭葉の水なるものにとても興味が惹かれます。
私だったら、相談者がこれを言い出した時点で受任しない気がしますね。
書いていない事情がいっぱいあるような感じの判決ですね。
ちなみに、最近はカルテ開示の手続が進んでいるので、受任=証拠保全とまでは言えません。蛇足ですが、誤解無きよう。
投稿: Toshimitsu Dan | 2007/08/03 13:58