arret:民訴新着_確認の利益がないとされた事例
ちょっと分かりづらいが、単純化すると、土地区画整理法に基づいて指定された仮換地をAからB、BからCへと譲渡された。仮換地と元の土地との価値に不均衡が生じた場合、その差を清算する必要があるが、仮換地の方が価値が高ければ仮清算金を仮換地の所有者が土地区画整理組合に対して支払わなければならない。
仮換地の元の所有者Aと、次の所有者Bと、現所有者Cとの間で仮清算金を誰が負担するかは、関係者に合意がなければ法的に決する他はない。そしてBとCとの間ではBが負担するとの合意ができたが、AとBとの間では合意ができなかった。
そこで、BがAを被告として、土地区画整理組合に対する仮清算金の支払義務がAにあることの確認を求めたというものである。
裁判所は、一般論として次のように判示した。
「確認訴訟における確認の利益は,当事者間に法律上の紛争があり,その紛争を解決するために訴訟物である権利又は法律関係の存否について確認判決をすることが有効かつ適切である場合に認められるものであり,原則として,当事者間の権利又は法律関係に限られるが,他人間の権利又は法律関係であっても,その存否を確認することによって,当事者間の法的地位を確定する利益が存在する場合には,確認の利益があると解するのが相当である。」
その上で、本件ではAの組合に対する支払義務を論じるのに仮清算金の発生自体の当否を問題としなければ誰が支払義務者かを論じることができないし、またAが支払義務者だとしても最終的な負担者が誰なのかは別の問題であるから、最終的負担者をめぐる紛争を抜本的に解決するのには有効適切でないとして、訴えの利益を認めなかったわけである。
このようにまとめると、本判決もそれほどおかしいわけではない。
ただ、事件の解決として控訴審で訴え却下してしまうことが適切かどうかは別問題だ。訴えの変更は難しかっただろうか?
現に存在するAB間の負担帰属の問題について、どのような訴訟物を立てればよかったのかというと、現にBが組合に仮清算金の支払いをしているのであるから、その清算金について端的に給付訴訟を提起すればよかったのかもしれない。
しかしB代理人としては、いったんBが負担してAに請求するよりも、Aが支払うべきだと考えたのであろう。
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