arret:将来給付の訴えが却下された事例
最判平成19年5月29日(PDF全文)
読売Online:最高裁、新横田基地訴訟で「結審後の賠償は認めず」
那須弘平、田原睦夫、両裁判官が反対意見を述べたが、結局従来の判例は変更されないこととなった。
また、判決文では補足意見が付いており、その中で最高裁判決のうち具体的事案に当てはめた部分が判例なのかどうかについて、分析検討が加えられている。
この点について、藤田裁判官の補足意見は至極微妙である。口頭弁論終結後、判決までの期間の損害賠償請求を認める原判決に合理性があり、田原裁判官・那須裁判官の意見に合理性があると認めておきながら、それは判例変更になるし、その程度の額を認めるため判例変更をすることの合理性も問題であるといって、結局多数意見通りにしている。
判例変更の手続は確かに大法廷回付を必要とするし、口頭弁論を開かねばならないので重いが、ことは法解釈の問題であり、額が低額だからというのは理由にならないように思われる。
どうやら反対意見のうち、那須裁判官は、本件で事実審口頭弁論終結後判決までの期間の損害賠償を認めることが大阪空港大法廷判決の判例に抵触しないという議論をしたらしく、小法廷限りでの判決が可能だと主張したようだ。また田原裁判官は判例変更をするべきとしているが、判決日までというのでも狭きに失するとして、不利益変更の原則に基づいて上告棄却にとどめるべきだとしている。
いずれにしても、結論は破棄自判であって、原告住民側としては、本判決言い渡しの時まで催告の効果が生じているという限りで訴えを提起した意味があり、改めて過去の損害賠償請求訴訟を提起することを強いられるわけである。
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コメント
弁護士出身の裁判官は反対にまわったわけですね。
投稿: madi | 2007/05/29 21:42