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2007/04/24

arret:自動車盗難の立証責任2

最判平成19年4月23日(PDF全文)

4月17日に紹介した最高裁判決では必ずしもはっきりしていなかったところが、この判決では明確になっている。

原判決は、「外形的・客観的にみて第三者による本件車両の持ち去りとみて矛盾のない状況が立証されている」ならば、盗難と推定されるとしたが、本判決はそれでは十分でなく、「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的な事実を主張,立証する責任は保険金請求者にあるとし、この外形的事実は「被保険者の占有に係る被保険自動車が保険金請求者の主張する所在場所に置かれていたこと」及び「被保険者以外の者がその場所から被保険自動車を持ち去ったこと」という事実から構成されるので、保険金請求者はこの二つの事実を主張立証しなければならないというわけである。

上記の17日判決の紹介において私は、「盗難を保険事故として保険金請求する場合に、保険事故の存在を請求者が証明するのは当たり前なのであるから、前段は別に一部を保険金請求者にも負担させたことにはなっていない」と書いたが、この点は少なくとも従来のオールリスク補填型の保険に関する学説の理解とは異なるようであった。ということを下記のように、K弁護士から指摘された。

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しかし、保険契約には、「保険事故を限定的に列挙する保険」と「保険事故を包括的に定める保険」とに区分することができ、この区分と保険事故に関する立証責任との関係でいえば、保険事故を包括的に定める保険である「オールリスク型の保険においては、保険事故の限定はないのであるから、保険金請求者は、保険事故が生じたという事実および保険事故と損害との間の因果関係の存在について立証すべき必要はなく、ただ、損害が生じたことのみを立証すればよく、これに対して、保険者が事故ないしは事故原因が免責事由に該当することの立証責任を負うというのが論理的な帰結である」と解されています(山下友信 保険法360頁)。
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そうだとすると、K弁護士の指摘通り17日の判決でも少し保険金請求者側の立証責任を加重したと評価できそうである。今回の判決は、その点をより明確にしたということもできそうだ。

もっとも、上記のオールリスク型保険であれば保険事故が生じた事実を立証しなくても損害さえ証明すれば保険金が請求できるという点に、もともと問題があったように思われる。
専門外のことゆえ、思わぬ誤りをしている可能性もあるが。

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