Westlawの本拠
Westlawを提供するThomson Corporationの本拠は、ミネアポリス近郊の町にある。
広大な敷地で、駐車場に連絡バスが行き交っていた。
ここで、ウェストロー編集の判例責任者と法令責任者のインタビューを行った。
判例責任者の方では、判例データベースを迅速に公表するために、オンラインで入手した裁判書は4分でデータベースに公開すること、60人ものエディター(すべてライセンスのあるローヤー)がヘッドノートを書くが、その執筆分野は分かれており、一日に10件もの判決にヘッドノートをつけるというハードな仕事をしていること、そしてエディターの経験者で有能なものが、分類者となって、伝統的なキーナンバーシステムへの割り付けを行っていることを聞かされた。
これらの仕事は、長くて1週間ほどで完了する。その間、入手してから4分後に公開し、1日以内にヘッドノートが付き、1週間以内にキーナンバーシステムによる分類がなされる。公開して順次アップデートしていくわけだ。
ちなみに、このヘッドノートは検索におけるキーワード集にもなるし、レフェランス情報も付け加えられるので、重要だ。仕事が早い代わりに、後で指摘があって直す羽目になることもあるという。例えば別の判決の参考判例として別のエディターが読んで間違いに気がついたり、データベースにアクセスした実務家や、自分の判決を見に来た判事などが指摘したり・・・。
判決の重要性ランクは、グーグルのようなページランクと似ているようで異なる。被引用の量により重要性を図るのであり、アクセス数は考慮されていない。アクセス数は、例えば囚人が暇に任せて同じ判決に何度も何度もアクセスしたり、弁護士が自分の関与した判決に頻繁にアクセスしたりということで偏りがあるからという。
もっともそのような偏りは大数の中で補正されるし、補正されない極端な例は手作業で修正しても良いと思うのだが。
判決の匿名化は特殊な例外を除きしないという。特殊な例外というのは子供の事件などである。その場合はそもそも裁判所が匿名で公表するようなので、独自に匿名化する必要がある場合はほとんどないという。
まあ、アメリカは当事者名で事件を表示するので、全部X v. Yとかなったら特定できず困るであろう。
ただし、古い時代の判決ではセンシティブな個人情報、例えば社会保障番号などが顕わになっているケースもあるので、そういうのは追跡して隠したという。時代によりセンシティブの基準が変わるのはやむを得ないし、アメリカでも同じということだ。
判決に個人的にノートをつけたりする機能は、ウェストロー自身にはないそうで、他のアプリを組み合わせるとできるという。これだと、はてぷのような使い方はできないのであろう。というか、ウェストローはてぷを作ってしまうと良いのかも知れない。
法令部門では、法令の改正履歴についてしつこく質問した。一応、改正履歴はあるのだが、例えばある判決の適用法規ということで、その判決が取り扱う事案の生起した時点での有効法律というような追跡はできないという。判決日の有効な法律というところまでは容易にできるのだが、時際法も絡んで難しいだろう。この点は夏井先生の下でのプロジェクトを思い出すが、あのプロジェクトは最終報告書みたいなのが出たのだろうか?
ということで、よく知っているようで聞いてみると色々耳新しい情報のあるWestlawであった。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 鳥取・河原城(2025.01.03)
- 白兎神社のお参り(2025.01.02)
- Book:准教授高槻彰良の推察2 怪異は狭間に宿る(2022.11.25)
- フランスのコロナ対策とマスク事情(2022.09.11)
- ロストバゲッジ(追記1,2,3,4完)(2022.09.04)
コメント
このエディターさんたちは、みな専業なのですか?
投稿: 小倉秀夫 | 2007/03/20 14:13
もちろんそうだとのことです。
投稿: 町村 | 2007/03/20 14:27