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2007/03/23

e-filingを実行しているキング郡上級裁判所

シアトル市にあるキング郡の上級裁判所を訪問し、所長のTrickey判事とプログラムマネージャーのWinters氏にお会いした。キング郡上級裁判所では、既に電子ファイルによる訴訟記録や電子ケースマネージメントは当たり前で、オンライン申立てにより訴えを提起することも可能、そして電子送達が次の課題という段階まで来ていた。

Kingcc非常にレトロな感じの法廷だが、モニターが妙に光っていた。

 Trickey判事とWinters氏によれば、キングカウンティ上級裁判所で電子化プロジェクトが始まったのは1990年代のことで、「電子的訴訟記録」システム(ECR)が実際に稼働し始めたのは1999年である。そして2000年1月3日以降に申立てのあった裁判所のすべての紙の記録は、ミネソタ州裁判所で行われていたように、スキャンしてPDFファイルとして電子記録にされてきた。
 現時点で5000万頁の電子記録が蓄積されており、2001年の後半に裁判所と書記Clerkとが紙の記録を保存しないことで合意してからは、もっぱら電子記録のみが保存されている。もちろん1999年までの事件記録はすべて、ふるいものはマイクロフィッシュにしながら、保存され、閲覧が可能となっている。
 そうした前提の上で、2005年2月から、e-filingシステムが稼働した。

 やり方はすこぶる簡単で、最初にログインID、パスワード、PINコードを登録し、以後は同一のIDでログインできる。
 ログインすると、新件の申立てか既存事件の申立てかを選び、新件なら申立ての種類、当事者名、事件種類を選択または入力し、次いで通常のワープロ文書として起案された申立書をPDFファイルにしたものを、ファイル選択によりアップロードできる状態にする。
 その次は、手数料の支払いだが、これはアマゾンか何かと同様にクレジットカード情報を入力する。同一カードを用いる限りは二回目にカード情報を入力する必要はなさそうだった。
 手数料の支払いが済むと、E-File Nowのボタンを押すことで、裁判所のサーバにデータが登録され、自動的に事件番号、担当判事、そして公判予定日やプリトライアルカンファレンスなどの審理スケジュールが機械的に設定されて表示される。もちろん機械的に設定されたスケジュールは判事と当事者の協議により変更も可能である。
 これだけである。

 さて、実際の審理では、上記写真のように法廷にモニターがあるので紙の記録がなくてもできるのだが、判事も書記官も、実際の審理では紙の記録がほしいという。そこで審理のたびにプリントアウトして持って行くという。ただし、それはあくまで控えであり、正式の記録原本はデジタルデータということだ。
ワシントン州一般裁判所規則30条3項に、その根拠規定がある。
An electronic document has the same legal effect as a paper document.

 問題は上級審で、控訴裁判所はこのe-filingをそのまま受け入れていない。そこで、あらゆる記録は控訴審に行く段階ですべて紙ファイルにプリントアウトされるのである。もっともECRは控訴審裁判所でも有効なので、電子データとしての訴訟記録は生成されているのであろう。

次のステップとして予想されているのが、電子送達だ。
ワシントン州一般裁判所規則30条2項に次のような規定がある。
(c) Electronic Transmission from the Court. The clerk may electronically transmit notices, orders, or other documents to the party filing electronically, and to any other person who agrees to accept electronic documents from the court.
(d) Electronic Service by Parties. Parties may electronically serve documents on other parties of record only by agreement.
 
つまり、裁判所からの通知も当事者間の送達も、受送達人の同意があれば、電子送達によることができる。この場合の詳細はまだ詰められていないという。

ミネソタでは、極めてシステマティックに電子記録化を進めてマネージメントシステムを発達させていたが、ここワシントン州の方はさらにe-filingを実現している分、一歩先を行っている。残された問題は、このシステムの利用率と、セキュリティである。

なお、紙の書類をPDFにして送るというのは、手軽で当事者にも裁判所にも抵抗のないやり方だが、例えば事件番号や当事者名、事件種類などの要素は別途入力しなければならないという難点がある。この点を解決するために、LegalXMLの標準にならいながら真のe-filingにしていくことが課題だとWinters氏は言っていた。Winters氏はこのLegalXMLのプロジェクトに参加している数少ない公的セクターの人間の一人だという。

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» rule:一般社団法人等非訟事件手続規則 [Matimulog]
ボツネタで紹介されていた官報のページ。 いずれ、最高裁サイトでも掲載されるのであ [続きを読む]

受信: 2008/10/01 10:14

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