e-filingを義務づけている西ワシントン連邦地方裁判所
シアトルにあるワシントン西部連邦地裁を訪問した。
ハイテクな装備をフルに備えた法廷と、ECR(Electronic Court Records)およびe-filingが目玉である。
法廷のハイテク装置については、概ねウィリアム&メリーで見学したりミネソタ大学ロースクールで見学したりしたものと同様で、証人や演述する弁護士等がタッチスクリーンに指で触って矢印を出したり円を描いたりできるのが実際に行われていた。同時通訳も可能であり、ビデオリンクによる証人尋問も、他の裁判所との間のテレカンファレンスも可能である。
この点はハイテクコート概観のページやバーチャルツアーが詳細かつ有用である。
裁判員バブルの波に乗って、この程度の装備は日本の法廷でも備えてほしいものだ。
もう一つのe-filingについては、少なくとも弁護士は正当な理由を証明しない限り、電子データでの申立てが義務化されていたことが驚きである。仕組みは州のe-filingと同様に、ログインIDを登録し、PDFファイルを送信する。なおe-mailアドレスを登録した弁護士に対しては、電子送達、電子通知も行われていた。メールアドレスを受け入れ可能にするのは弁護士の責任だとされていた。
また、申立てと同時に、機械的に担当判事とスケジュール(審理計画)が設定されるのも同様であった。少しつっこんで聞いてみたが、機械的に設定される審理計画が実際に見合わない場合には、もちろん裁判官にそのモーション(これも電子申立て)を提出して、伸縮してもらうわけだ。
連邦のこの裁判所においても、電子データは紙のデータと同一の価値を持つとして、例え紙の申立てがなされたとしても、それは保存しない。すべてスキャンして電子データとして保存するのである。
技術的には、ほとんど新しいことはない。要はセキュリティの不安があるので、例えば裁判所内部では無線LANは使わないようにしているとか、IDパスワードが他人に使われているおそれが判明したら直ちに裁判所に電話で連絡せよとか、対策はとっている。
またe-filingができない弁護士というのは想定されておらず、情報提供と累次の研修を裁判所が提供してカバーしている。本人はe-filingができなくても仕方がないとされているが、それでもPDFファイルはCD-ROMなどで提出せよとされている。
日本の裁判所でも、すぐにでも始められそうなことばかりである。少なくとも外部のベンダーに何億とはらって一見よさげだが使えないシステムを導入してしまうよりも、ワシントンDCにソフトを提供してもらって日本用にカスタマイズと日本語化したら良いのだ。
いや、その前に紙媒体ではなくても原本性を認めるという、日本人には革命的なのかも知れない発想の転換をしないとならないのだが。e文書一括法を裁判所にも適用すればよいのに。
| 固定リンク
「学問・資格」カテゴリの記事
- Book:ファスト・カレッジ 大学全入時代の需要と供給(2024.05.30)
- Book:大学教授こそこそ日記(2024.03.07)
- ChatGPTでレポートは書けるか? 民訴一行問題でやってみた。(2023.01.23)
- 日本評論社が、Kindle本の半額セールを1月19日まで実施中(2023.01.07)
- Book:博論日記(2022.09.01)
コメント