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2007/03/14

Courtroom21は今?

Williamsburgといえば、Courtroom21projectで世界的に有名だ。
このプロジェクトは、現在The Center for Legal and Court Technologyという名称の下で活動を拡大させており、Courtroom21はその一部をなしている。

日本にも随分前から紹介され、何人もの知り合いが訪問しており、桐蔭横浜大学の笠原教授は特に密接な協力関係を持っていたので、一度訪れたいと思っていたが、今回ようやくその希望を叶えることができた。

Fredric I. Lederer所長に直接お話を伺った。

William and Mary大学のLawschoolにあるこのセンターは、現在次のような活動を行っている。
・裁判官や裁判所職員のためのハイテク機器利用研修
 全米1366の法廷のうち、363箇所でネットに繋がったラップトップを備え、また370箇所では陪審員用にビデオモニターを備えている。それらの効果的な使い方についての研修である。実際、1999年段階アメリカで生み出される情報の93%がデジタル媒体によるものであるので、裁判上のデジタル情報取り扱いはありふれたものとなっている。
・プロジェクタや3Dのバーチャルリアリティを使った裁判実験
 陪審に複雑な事件を分かりやすく伝えるための工夫である。もっともその陪審に与える影響については、特にミスリードする危険性については研究中であるとのこと。
・国際的な大学間モックトライアルコンテスト
 ネットワークを通じてメルボルン、キャンベラ、その他のオーストラリアとアメリカの大学を通じ、ドメインネーム紛争に関する模擬裁判コンテストを行った。
・プライバシー保護
 法情報のデジタル化と裁判記録へのアクセスが容易になるにつれ、プライバシー問題が重要性を増してきている。日本とは全く異なり、例えは破産裁判所の審理記録はIDを有する弁護士であれば誰でもアクセス可能となっており、その中に含まれる社会保障番号、融資記録、家族・健康等のセンシティブ情報などが保護を必要としている。この問題は、継続的にカンファレンスなどで扱われている。
・障害者のためのハイテク技術利用
 目の不自由な裁判官のための文書・証拠の提示システムや、アニメーションの内容説明、これは目の不自由な陪審にも用いられる。また耳の聞こえない陪審に対するハイテクアシストなども研究中である。

その他、メキシコとアメリカとに分かれた夫婦の親権争いについて、両国の法廷をネットにより合同開催する試みが行われていた。ネット・ビデオ・カンファレンスや同時通訳、同時スクリプティングなどの技術を活用して、アメリカとメキシコの裁判官が、いわば合議体を構成するわけだ。もちろん判断はそれぞれの主権に属することであるため、合意が裁判官同士の間に成立しない限り、統一解決は難しいが、統一解決のための大きな助けとなるわけである。

ということで、ハイテク機器の裁判利用に関して、研究すべき事項は尽きることを知らない。

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