arret:酒の席の暴言で降格処分
なかなか興味深い事件だ。
酒の席で暴言を吐いたことについて、覚えてないという言い訳はきかんぞ。暴言は言った方より言われた方に強く印象が残るものだから、言われた方の証言の方が信用できるんだ、という判決である。
判決中で認定されている暴言の数々
「被控訴人は,かねてから用水路の改修工事に消極的な意見を述べていたA監事に対して自らの意見を述べようと考え,この2次会の席において,向かい側の席にいたA監事に対し,
監事のおかげで改良区も職員の立場もめちゃくちゃにされた,
あんたは後ろから石をぶつけられるぞ,
あんたは世間からどうにもならんやつだと言われている,
あんたの後継者の立場も家族の将来もなくなるぞ,
あんたのような人が亡くなったとしても改良区の職員は誰一人として葬式には行かないなどと発言した。
被控訴人はこのほかにも,
賦課金を多く支払っている農家のためにも用水路の改修工事をするべきであると述べたほか,
A監事が被控訴人からの問いに答え,控訴人への賦課金を7万円しか支払っていないと発言したことに対し,
200万円の賦課金を払っている人がたくさんいるが,その人たちの幸せをどう考えているのか,などと述べ,
さらにA監事が小さい農家は意見を言ってはだめなのかと発言したことに対し,そうだなどと述べた。」
また別の酒の席では、「被控訴人は,B理事に対し,
お前なんか理事を辞めろ,
次の改選期には出てくるな,
俺は80年の歴史のある改良区のためを思って言っているんだなどと発言」してケンカになった。
判決では、さらに最初は覚えていないといいながら、だんだんと、この発言はあった、この発言もあったと小出しに認めていくという変遷は、時間とともに記憶が曖昧になっていく経験則に反するので、不自然だとして、被控訴人の供述が信用できないことの理由にしている。
被控訴人は一応酒の上の話なんだから、許されて然るべきという抗弁もしている。
しかし、判決はいう。
「懇親会,2次会とも控訴人の費用で運営されている上,酒席における出席者も控訴人の理事,監事及び控訴人の職員に限定されていることからすれば,職務執行に関連性がないとは言い難い。しかも,酒席とはいえ,どのような発言をしても責任を免れるものではなく,とりわけ,控訴人の事務部門の長である総務部長には,酒席においても,節度ある言動が求められるのであるから,被控訴人の主張は採用できない。」
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コメント
昔、東京地検特捜部へ応援に出されていた時、主任検事の見通しが悪く、頭に来て怒鳴りつけたりしたことがありますが、あれも「暴言」と言われればそうでしたね。
その後(私が放逐された後)、一連の捜査の結果、起訴された事件で無罪が出たりして、ああ、やっぱり、と思った記憶があります。
とはいえ、言動はできるだけ穏やかにしておくに越したことはないでしょう。
投稿: yjochi | 2007/02/08 22:14