« velo温暖化対策 | トップページ | Cour d’Assise フランスの裁判員裁判(続き) »

2007/01/10

Cour d’Assise フランスの裁判員裁判

 結果的に日本の司法制度改革はフランスの制度によく似た制度を導入することが多いのだが、裁判員裁判もフランス法に近い制度となる。また法務省が導入予定(復活予定?)の刑事裁判で損害賠償請求が可能となる付帯私訴制度も、現にフランスで行われているところだ。
 パリの裁判所を訪問したついでに、説明と傍聴の機会が得られたので、簡単にまとめておく。

 フランスでは重罪院Cour d’Assiseという高等裁判所レベルでの第一審刑事裁判所において、3名の職業裁判官と9名の市民とが合議体を構成する「陪審」裁判が行われている。
 日本の法律用語で言うならば、「参審」制だが、フランス語ではJury, Jurorという言葉を使うので、ここでも陪審という言い方をする。

 陪審選定手続の後、選定された陪審と裁判官とが法廷に座った。男性5人、女性4人で、年齢や風体もばらばら。被告人かと見間違えるような強面のTシャツのお兄さんもいる。
 まずは予審判事が被告人の罪状を朗読する。日本で言うならば冒頭陳述に相当する。私の傍聴した事件では二名の被告人について、それぞれ多数の強盗を犯していたため、1時間以上にわたって朗読が続いた。陪審員たちは一人も居眠りすることなく、ときおりメモを取りながら聞き入っている。
 予審判事の朗読の後、裁判長(三人の裁判官が全員女性だった。中央の裁判長だけ赤いローブで、陪席裁判官は黒のローブ)が被告人に対して尋問していく。否認事件ではないので犯罪事実については争いなく、尋問はもっぱら被告人の生い立ちや教育歴、家族環境に絞られている。フランスの刑事裁判を傍聴していると、いつも心理鑑定が重視されるが、犯罪の背景事情が量刑に強く影響するのかもしれない。
 被告人は、女性裁判長に対してMadame le Presidenteと呼びかけていた。文法的におかしい気もするが、語尾のtを発音していたように思うし、la presidenteではなかったように思う。
 被告人に対する尋問の後は、心理鑑定人の証言、そして親族の情状証人と続く。

|

« velo温暖化対策 | トップページ | Cour d’Assise フランスの裁判員裁判(続き) »

コメント

 はじめまして。フランス法に関心ある法科大学院生です。
女性の重罪院裁判長に対して被告人がMadame le Presidente と呼びかけていたとのことですが、大臣や司法官など、かつては女性が就くことができなかった職業は、いまだに冠詞は男性系で呼称されているそうです。もうだいぶ前になりますが、フランスの女性司法大臣(たしか初めての女性破毀院院長であったエリザベス・ギグ司法大臣であったように記憶しています)が議会でMadame le Ministre と呼ばれて、「Madame le Ministreと呼びなさい」と反論したという話が新聞に載っていました。おそらくフェミニズム的な観点から、そのような主張をされたのだと思います。 

投稿: 一法律学徒 | 2007/06/24 22:42

訂正です。

>「Madame le Ministreと呼びなさい」と反論したという
この箇所の定冠詞を間違えていました。

女性司法大臣は「Madame la Ministreと呼びなさい」と反論されたようです。すいません。フェミニズム的観点から大臣のような職業が男性だけのものではないということを強調されたのでしょう。

投稿: 一法律学徒 | 2007/06/25 17:16

フランスの裁判に興味がある者です。
フランスの裁判では裁判官、弁護士、検察官など皆各自、決まりモノの制服を着ていると思うのですが、陪審員もなにか決まった衣裳があるのでしょうか?
教えて下さい。

投稿: ウーノ | 2007/10/25 21:49

ウーノさん、私が傍聴したときの記憶では、陪審員は平服でした。

投稿: 町村 | 2007/10/25 23:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Cour d’Assise フランスの裁判員裁判:

« velo温暖化対策 | トップページ | Cour d’Assise フランスの裁判員裁判(続き) »