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2006/12/01

Arret:住基ネットを拒む権利は保障されるべし

大阪高判平成18年11月30日朝日.com
(引用)
住基ネット「同意なければ違憲」 大阪高裁が削除命令
判決はまず、自己のプライバシー情報の取り扱いについて自己決定する権利(自己情報コントロール権)は憲法で保障されているプライバシー権の重要な一つになっているとし、住基ネットが扱う氏名、生年月日、性別、住所の4情報について「私生活上の平穏が侵害される具体的危険がある場合は、自己情報コントロール権が侵害されたことになり、本人確認情報の利用の差し止めはできる」との判断を示した。

 情報漏洩(ろうえい)の危険性については、自治体でセキュリティー対策が施されるなど具体的な漏洩の危険は認められないとしたが、個人情報を利用する国の事務が270種を超えて拡大し続けている現状などを指摘。行政機関が住民票コードをマスターキーのように使い、個人情報が際限なく集積・結合されて利用されていく危険性があるなど、住基ネットの制度自体に欠陥があると断定した。

 こうした欠陥が主原因となり、「多くの個人情報が本人の予期しないところで利用される危険があり、住民の人格的自律を著しく脅かす危険をもたらす」と述べた。(引用終わり)

自己情報コントロール権の強い差止権能を正面から認めた高裁レベルの判断として、注目に値する。
ただ、最近のリベラル化している最高裁といえども、この判断が受け入れられるかどうかは大いに疑問だ。
住基ネットにより個人情報の集積がいやが上でも進むというリスクがあっても、そのこと自体が公共の利益だと評価されそうである。

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法律・裁判」カテゴリの記事

コメント

言われていること自体は徹頭徹尾、すでにどこかで議論されつくした結果にそっていますので、さすがにそれらを無視して、リスクを押してまで、公共の利益とはみなされないんじゃないかな、と期待。

投稿: サスケット | 2006/12/01 01:42

 結局、なつかしき『国民総背番号制度』『データベース社会』で指摘され議論し尽くされた「名寄せ問題」を克服できないことでしょう(佐藤幸治著「憲法」でも指摘されている)。
 データベースの基本的仕組みを知っている人なら、やっぱりね、というだけと思われます。
 I◎M360全盛時代と変わらない自己情報統括権というプライバシー侵害を払拭するのは原理的に不可能でしょう。FBIのメインコンピュータ(通称ビッグサム)が「キー串刺し(名寄せ)」で犯人を特定追及している実例があるのですから。

投稿: ハスカップ | 2006/12/01 07:47

お二人のおっしゃるとおりなんですが。
それにコンピュータ時代では現実のものとなっている、というよりありふれたものとなっていますし>名寄せ

いまさら住基ネット番号が付いたからといってどうだ、という反論が聞こえてきそう。さすがに最高裁はそういう言い方はしないかもしれませんが。
行政の利便性と国民の利便性を重視する方向だろうと思います。

投稿: 町村 | 2006/12/01 10:40

 財産関係なんかは、利害関係人が名寄せできるようになると、相続関係とか、「隠したもの勝ち」みたいな状況を少しは改善できるのですが。

投稿: 小倉秀夫 | 2006/12/01 18:19

>財産関係なんかは、利害関係人が名寄せできるようになると

 私人に過ぎない利害関係人に個人の資産情報の名寄せ調査権を認めるのは不当にプライバシーを侵害する見解です。
 こういうことは法執行機関が令状(裁判所の事前審査)で行うのが憲法の建前のはずです。令状が不要なことをいいことに司法書士や弁護士が不正に他人の戸籍や住民票を取り寄せたことから職務上の照会制度手続きを厳格にせざるを得なくなった事案を思い出して、うそ寒い思いをします。
 他人のプライバシーや資産を暴くことを容易にする考え自体が問題でしょう(憲法13条の自己情報コントロール権の尊重)。最近の若い弁護士は何を考えいるんだか。

投稿: 某研究家 | 2006/12/01 21:02

超根本的な疑問なんですが、住基ネットって実際に役に立っているんですか?

投稿: 酔うぞ | 2006/12/01 22:08

>住基ネットって実際に役に立っているんですか?

 外国人が日本人に成りすますのには役に立ってます。
 日本人の知人から借りた国民健康保険証で住基カードを作れば、その日から外国人も日本人に成りすませるので、日本人名義のパスポートも採り放題。統一ID制度なんてこんな抜け穴があります。使わない国民には住基カードを他人がもっていても気が付かないし。
 ブラックユーモアで恐縮です。
 この手口のオリジナルは、米国で密入国者が死んだ米国人のソーシャルセキュリティナンバーを借用するところから来てます。

投稿: ハスカップ | 2006/12/01 22:25

>住基ネットが扱う氏名、生年月日、性別、住所の4情報について「私生活上の平穏が侵害される具体的危険がある場合は、自己情報コントロール権が侵害されたことになり、本人確認情報の利用の差し止めはできる」との判断を示した。

 これは住基ネットだけでなく、オープン系コンピュータネットワーク(インターネット)全てに当てはまると思います。SNSで人定が特定された不幸な事件を思えば、ネットで「氏名、生年月日、性別、住所の4情報」を明らかにすべきではない時代に突入したのでしょう。ハンドルでブログをやっていても、実名暴きや実名晒しに執念を燃やす方も出現していることですし。
 これからはネット上でのプライバシー侵害から身を守るために、複数のメアドを使い分けるように複数のハンドルを使い分けることを勧める見解が多数説になると予想してます。残念ですが。

投稿: ハスカップ | 2006/12/01 23:47

 利害関係人に限定すれば、不当でもないと思いますが。実体法上の法律関係が正しく手続き法的に実現することは、法治国家としては好ましいことであって、「隠れたもの勝ち」「隠したもの勝ち」が罷り通る国家というのはあまり望ましくはないのですから。
 自己情報コントロール権と言っても、自分に関する正しくない情報を流布させ正しい情報を隠蔽する権利までは含まないでしょうに。

投稿: 小倉秀夫 | 2006/12/02 00:44

>自己情報コントロール権と言っても、自分に関する正しくない情報を流布させ正しい情報を隠蔽する権利までは含まないでしょうに。

 名誉に対する罪では、たとえ「ふしだらな売春婦」でも「貞操固きご婦人」という名誉感情や外部的名誉は保護に値する、という講壇事例をお忘れですか。旧司法試験の択一れベルですが? この前は昼間の主婦向けワイドショーの法律講座でもこの事例をやってましたよ。
 馬鹿であっても馬鹿と本当のことを言ったら侮辱罪か名誉毀損になりますよね。つまり刑法は自己に不利益な情報を拒む権利を法的に保護しているのです。それは憲法13条のプライバシー権に根拠を有します。他人の秘匿したい個人情報をそこまで暴こうとする論旨が理解できません。

投稿: とおり | 2006/12/02 02:05

>自己情報コントロール権と言っても、自分に関する正しくない情報を流布させ正しい情報を隠蔽する権利までは含まないでしょうに。

 小倉式共通ID構想の利点ばかりを宣伝し、問題点の指摘に法化無理・・・もといホウカムリする方の言とは思えません。

投稿: 匿名プロクシの著作業 | 2006/12/02 02:16

それに

>財産関係なんかは、利害関係人が名寄せできるようになると、相続関係とか、「隠したもの勝ち」みたいな状況を少しは改善できるのですが。
>実体法上の法律関係が正しく手続き法的に実現することは、法治国家としては好ましいことであって

ならば先ず最初に法律より優位する憲法の人権規定とくに憲法13条のプライバシーの権利を守りるのが法治国家として望ましいのでは?
保護法益の順番は、生命>身体>人格(名誉やプライバシー)>財産……と20年以上も前の法学部で習いましたが、たかだか債権回収で弁護士を設けさせるため、多数の名も無き庶民のプライバシーが危険に晒される世界をお望みですか?

投稿: 匿名プロクシの著作業 | 2006/12/02 02:23

 なんか最近の小倉秀夫さんのコメント眺めていると「弁護士の俺にも警察や検察のようなプライバシーを暴く強制権限を寄越せ」と言っているように聞こえるけど?

投稿: 理想だけは立派? | 2006/12/02 02:35

 その方が、民事紛争の早期解決に資することになるとは思いますけど。

 警察等に頼ることなく一定の情報を調査する権限が紛争の当事者またはその代理人に認められていない社会で、紛争の早期解決を図るとなると、隠したもの勝ちになってしまいます。

 民事訴訟法学者としての町村先生は、「プライバシー権」を重視して「隠したもの勝ち」の社会を支持されるのでしょうか。

投稿: 小倉秀夫 | 2006/12/02 08:04

基本四情報を含んで、少なくとも個人情報保護法に定義されている個人情報の取り扱いには、各人その慎重さを求めても良いように思います。
つまり、それらを提示するかしないかをもっと慎重に選択すべきだ、ということです。

たとえば、明治時代ならいざ知らず、今では各人に関する情報も広範囲に渡ってしかも一気に拡散します。状況が大きく違うので、昔のように「余所者が来たら翌日には村中が知っている」や、「みんな良く知った人だから鍵をかけなくても安心」といった暗黙の相互保証式認証モデルをインターネット上に適用することは困難です。
明示的な相互保証式の認証モデルはPGP公開鍵の交換やSNSで一応の成功例がありますが、それらは一定の保証の連鎖があることが前提です。
その連鎖すら断ち切った状態では、自己情報のコントロールはありえません。


住基ネットに対しても同様でしょう。登録しなくても良いようにできたほうがベターだと思います。今からの手続きとしては、登録情報の抹消が簡単にできる手続きを備える、ということになるでしょうか。
対して、住基ネット側も「引越しのときに便利」といった程度のメリットしか提示できない状況を改め、「だって登録したほうが得だもん」と思えるような行政サービスを提示すればよいでしょう。

ただ、住基ネットはインターネットと違い、独立した閉鎖性の高いネットワークのはずです。一応はそういうことになっているはず。
そのため、名寄せができるのは住基ネットの利用者に限られます。利用者の利用状況を含め、住基ネットの監査をしっかり行うことで担保できるなら、そういった方向で名寄せの危険性を低減するのもアリではないかなと思います。
#つまり、名寄せできるシステムであることを認識した上で、名寄せさせない運用を徹底させる方式


現時点では住基ネットの利用目的や利便性に訴求力がなく、理解を得がたいものになっているように思います。せいぜい登録の抹消に必要な裁判が面倒だからそのままにしている、という人が行動していないから大部分がそのまま登録しているといった状況なのではないでしょうか。

私も今ひとつ利便性を見出せていません。せいぜいが定期的に役所から大規模なコンピュータの入れ替えが確実に発生してメーカーに若干の利益が生まれるといったところではないでしょうか。
その出所が我々の税金かと思うと気分も萎えてきます。

投稿: 菅理 徹 | 2006/12/02 09:18

 私人であるブログ主の立ち位置だって、事前に同意を得ないまま相手のパソコンから吸い出したクッキー情報を利用して相手のアクセス情報を無断で曝す(注)。相手を匿名で書けばいいということにならないし、それこそ「匿名の陰に隠れた卑怯者」だ。
注)http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2006/08/cool_down_pleas.html

 そうこうことをする弁護士小倉様に、庶民のプライバシーを名寄せで暴く弁護士権限なんか認めたりしたら大変なことになるよ。
 弁護士小倉様は検事か刑事に任官した方がいいんじゃないかな。(もともと検事や裁判官の任官を考えていたと前に自分のブログで書いていたし)
 そうすれば、警察大学や検察大学で被害者や被疑者のプライバシーを守る人権規程(職務上知りえた関係者のプライバシーを本人に無断で不用意に曝してはならない)をみっちり仕込まれるそうだから。

投稿: 副田盛十二夫 | 2006/12/02 09:20

【A】
>「プライバシー権」を重視して「隠したもの勝ち」の社会を支持されるのでしょうか。(投稿 小倉秀夫 | 2006/12/02 8:04:33)
【B】
「たかだか債権回収で弁護士を設けさせるため、多数の名も無き庶民のプライバシーが危険に晒される世界をお望みですか?」(投稿 匿名プロクシの著作業 | 2006/12/02 2:23:31)
「なんか最近の小倉秀夫さんのコメント眺めていると「弁護士の俺にも警察や検察のようなプライバシーを暴く強制権限を寄越せ」と言っているように聞こえるけど?」(投稿 理想だけは立派? | 2006/12/02 2:35:56)

【A】と【B】は時間軸が逆転しています。
他人の質問からは逃げていて、自説だけを強引に展開しているだけに読めます。
でも、それは、どんな高説でも
>OguraHideo 『 理想がなければ、理想に向けての戦略も何もないってだけの話だとは
>思うのです。自尊心ゲームを、他人を貶めてみせることでしかできない(ポジティブに
>アピールすべき個としての美徳に自信がない。)から、そうしているだけなのではない
>かという感じはしているのです。
> でも、そうやって逃げていてもいつまで立っても個としての自分に自信を持てるだけ
>の美徳は身に付かないから、どこかで現状から決別して個としての自分を前面に押し出
>して、自分を磨く方向に進んでいかないと埒があかないのですが。』
http://d.hatena.ne.jp/Schwaetzer/20061129#c1164846066
という批判から逃れられないでしょう。

投稿: 骨庵堂 | 2006/12/02 11:03

「隠したもの勝ち」vs「ぶっこ抜いたもの勝ち」
ということでしょうね。

投稿: ak | 2006/12/02 16:03

> 警察等に頼ることなく一定の情報を調査する権限が紛争の当事者またはその代理人に認められていない社会で、紛争の早期解決を図るとなると、隠したもの勝ちになってしまいます。

これに対するサイテント☆魔女リティの言葉

「それ、ほんとなのかなあ。」

(ま、たぶん「早期」あたりが逃げワードだと思いますが(苦笑))

投稿: U-me | 2006/12/02 20:10

大阪高裁判事自殺か 住基ネットに違憲判断
http://www.kobe-np.co.jp/kyodonews/news/0000183088.shtml

投稿: 東馬 | 2006/12/03 20:50

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