jugement:ねこの里親として大量に騙し取っていた女に賠償責任
大阪の20代の女が、捨て猫の里親になると称して大量にネコを引き取っていた。上記判決中その女(被告)自身の供述によっても30匹から40匹くらい引き取っていたという。
そのネコの行方は不明である。
この女に捨て猫の里親としてネコを引き取ってもらった人(原告)が、騙されたらしいと気がついて、ネコを返せ、損害賠償を支払えという訴訟を提起した。
いくつか、勉強になる点。
第一に判決は、ネコの特定が十分でないとして引渡請求については訴え却下した。
動産引渡請求の訴えで、目的動産の特定がなされていなければ、請求が特定されていない、すなわち訴訟物が特定されていないということで不適法となる。その例である。
第二に贈与契約を詐欺によるものだとして、不法行為請求された例である。
詐欺の根拠について、判決は以下のように判示する。
「被告は,原告らに対し,そもそも,本件各ねこの里親として,本件各ねこを飼養する意思がなかったにもかかわらず,『終生の家族としてねこちゃんを迎え』たいなどと虚偽の事実を告げて,その旨原告らを誤信させて,本件各ねこを詐取したものであるから,原告らに対し,詐欺を理由とする不法行為責任を負う」
この本件各ネコを飼育する意思がなかったということは、現在適切に飼育していないということを根拠として認定しているわけだが、実はネコをきちんと飼育しているかどうかは真偽不明である。しかし、ネコの所在を釈明によっても明らかにしようとしない被告の対応(訴訟上の)をとらえて、ネコについて適切に飼育していないという推認根拠とした。
本来は原告が証明責任を負うべき事項について、上記のように被告が事実を明らかにしないことを根拠として認定した点も、証拠法上は興味があるところである。
それにしても、何十匹もネコを引き取っていったこの女、いったいどうしたのだろうか?
明治時代の大学生みたいに食べたということはないと思うが、三味線の皮として売れたりするのだろうか?
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コメント
かつて、マクドナルドを中傷する都市伝説としてネコ肉を使ってるというものがありましたが、解体処理する手間暇からすると、たとえタダで仕入れても、ネコ肉の方が牛肉よりも高価です。
投稿: Inoue | 2006/10/05 07:21