jugement:ピーターラビット訴訟
知財高判平成18年10月26日(PDF全文)
ピーターラビットの登録商標の使用につき、不正競争防止法違反を理由とする使用差止めが仮処分および本案で命じられていた場合に、禁止された商標と類似する表示を使用していたとしても、それは「正当な使用」ではないので、3年間の不使用に基づく商標法50条1項の登録取消が認められるとされた事例。
民訴的な関心から興味深いのは、仮処分と本案判決による商標使用差し止め命令が、判決等で示されたものと全く同一というわけではない表示の使用にも効力を有するという点と、差し止め命令の存在が仮処分の段階にとどまっている場合は使用しないことに正当の理由があると判断され、仮処分プラス本案判決も確定している段階では使用していても正当な使用と認められないと判断された点である。
詳しくは判決文を参照のこと。
さわりは以下。
「審判請求登録前3年以内の日本国内における当該商標の使用は,その使用自体が法的保護に値する正当な行為といえるものでなければならないというべきであって,当該使用が,その使用を禁止する仮処分あるいは執行力ある判決に違反してされたものであるときは,そのような違法な状態のもとに信用の蓄積を認めることは許されず,かかる違法な使用は,商標法50条にいう登録商標の使用に当たるということはできない」
「仮処分は,判決による権利の確定とその実現を図るまでの間の暫定的な措置であるところ,例えば,仮処分を遵守して商標を使用しないまま3年が経過したとしても,未だ本案の判決により権利が確定していないとすれば,仮処分の被保全権利の存否自体が未確定の状態にあるというべきであるから,その間の不使用を理由に当然に不使用取消しとなると解することは相当でなく,このような場合には,仮処分によって使用が禁止されたために当該商標を使用できないことをもって,商標法50条2項ただし書にいう「使用をしていないことについて正当な理由」がある場合に当たると解する余地がある。」
「仮処分決定及び本案判決を債務名義とする執行手続においては,いかなる行為が禁止されているのかということが一義的に明白である必要があるから,禁止された表示の範囲に含まれるかどうかは,当該表示の使用が禁止された表示と同一性を有するといえるかどうかによって判断すべきであり,両表示が微細な点について完全に一致するものでなくても,全体的に見て同一性を有するといえれば,その禁止された表示の範囲に含まれるものと解すべきである。」
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