arret:譲渡担保権者の債権者による差押えと設定者の受け戻し
Aは、自己所有土地を債権者Bのために譲渡担保に供した。Bに対する債務の弁済期到来後、Bの債権者がその土地を差し押さえて登記した。そこでAは、Bに対する債務を全額弁済し、譲渡担保の受け戻しによる所有権を主張してCの差押えに対抗するべく第三者異議の訴えを提起した。
Aは自分の土地を取り戻せるだろうか?
(判旨)
不動産を目的とする譲渡担保において,被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ,その旨の登記がされたときは,設定者は,差押登記後に債務の全額を弁済しても,第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできないと解するのが相当である。
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コメント
弁済期前は第三者の差押は無効だが、弁済期後は第三者の差押は有効という判決だが、その理由は何でしょう。条件付物権とでもいうものを認めたのか、それとも債権者債務者間の契約が差押債権者に対しても有効と言うことか。じゃあ譲渡担保契約の内容は、無制限に差押債権者に対抗できるのか。
差押債権者は、物権上の瑕疵を引き継ぐが、これは物権上の瑕疵なのか。
「不動産価値>被担保債権」の場合、どうなるのでしょう。競売となった場合、債務者は「不動産価値-被担保債権」の部分で比例的満足しか得られないのか、それとも何らかの優先弁済が得られるのか。それは抵当権の場合と比較して正当か。もし譲渡担保契約に「債権者は、不動産価値評価額-被担保債権の額を債務者に交付した場合、担保物を処分できる」とあった場合、これは差押債権者を拘束するのか。
全てを合理的に説明しようとすると、信託の法理を持ってこないとだめだと思うのですが。(担保不動産でなく、譲渡担保付貸付債権を差押させるようにする。)
投稿: よくわかんない | 2006/10/23 17:29
条件付き物権という表現はよく分かりませんが、
最判平成6年2月22日民集48-2-414では弁済期後に譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したというケースで、二重譲渡のような背信的悪意者排除は適用にならないとしています。
これと平仄が合っていそうです。
投稿: 町村 | 2006/10/24 09:09
ありがとうございます。今回の最高裁判例が、傍論でわざわざ、弁済期前なら、債務者(=担保提供者)は弁済して担保物を取り戻し、強制執行を不許とすることが出来ると述べている点が分からないと言うか、強制執行の可不可は物権の状況に基づくのだと思うのですが、弁済期の前後で物権の性質は変るのでしょうか。言い換えると、「弁済期後に債権者が担保物を処分する権能」というのは、物権的権利なのか債権的権利なのか、あるいは「弁済期前に債務者が担保物を処分されない権利」というのは、物権的権利なのか債権的権利なのか、私にはわかりません。(すいません。人様のBLOGに独り言を書き込んでしまいまして。)
投稿: よくわかんない | 2006/10/24 14:59