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2006/09/08

jugement:医療過誤、不法行為と債務不履行が主位的予備的請求

大阪地判平成18年7月28日(PDF全文

くも膜下出血を見逃した過失があるとされた事例で、それ自体はあまり珍しくはない。珍しいのは、この判決が不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求権を主位的請求として、診療契約不履行に基づく同額の損害賠償請求権を予備的請求として、構成している点である。

判決主文は主位的請求の一部認容、その余の主位的請求および予備的請求を棄却するというものだ。

考えてみると、選択的併合だとしても、不法行為請求権で一部認容となれば、棄却された部分にかかる診療契約不履行の損害賠償請求権も棄却判決を下さないとならないはずだ。

しかし実際にはそうはっきりとはなっていない。その例として藤山コートの東京地判平成18年9月1日判決(PDF)参照。
この判決では、不法行為または債務不履行に基づき請求するとあり、主文では請求額の約半分を認容し、原告のその余の請求を棄却するとだけ記載している。この記載であれば、選択的併合の一方(不法行為請求権)を一部認容し、不法行為と債務不履行の双方を一部棄却したのか、それとも新訴訟物理論にのっとって請求権は一つと考えたのか判然としない。

いずれにしても、請求権競合のケースで、一方を主位的請求、他方を予備的請求とするのは、ロースクールの答案であれば×がつくことであろう。

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コメント

育情報学会が8月に岡山理科大にあってコーディネータとして参加しておりました。
内容等については岡山理科大等のホームページを参照ください。教育現場での問題がいろいろでていて、ネタとしてつかえそうなのはいろいろあると思います。

投稿: 岡本哲 | 2006/09/10 11:56

えと、ひとつ前のコメントは情報ネットワーク法学会開催に関するものです。対象発言をまちがってしまいました。

この発言に対するコメントです。
たしかに主位副位ということは選択的併合概念と矛盾しますね。どう判断するかは選択的併合の場合当事者意思に裁判所は拘束されませんから。

投稿: 岡本哲 | 2006/09/10 12:06

民事訴訟法学用法尊重 か 当事者用法尊重か
-----------------------
本件判決をどう理解するのか

1 当事者の主張の整理→当事者の主位的、予備的請求という表示を尊重した

2 法律的には、選択的併合の事件ではない。

3 法律的には
イ 請求権(一部)競合-付帯請求の始期が異なる。
ロ 大請求と小請求の競合(小は大に含まれる)
ハ 強いて言えば、一次的請求 二次的請求

4 判決は
イ 一時的請求の一部を--認容
ロ 二次的請求(認容請求に含まれる)を--棄却した
 
5 結論
イ 表現の問題か
ロ 裁判所が、従来の民事訴訟法の世界の用法を無視し、(当事者の表現を尊重し)
ハ 一時的請求の一部を認容する。その余の一時的請求は棄却する。
  従って、これに含まれる二次的請求は、二次的であるが故に、棄却する。

6 法律論理として、おかしくはない。
ただ、従来の民事訴訟用法を無視し、当事者の用法を尊重して表現した。

投稿: 弁護士五右衛門 | 2006/09/11 20:10

4 判決は
イ 一時的請求の一部を--認容
ロ 二次的請求(認容請求に含まれる)を--棄却した
------------------
 上記の表現は不正確。
イ 一次的請求の一部を--認容
ロ 一次的請求のその余の請求を棄却(これに含まれる二次的請求の棄却を含む)
ハ 二次的請求の(その余の請求を)棄却
-----------------
 こんな技巧的な解釈をしなければいけない判決は、、問題か??

 しかし、当事者の主張表現には従順か??

投稿: 補足-弁護士五右衛門 | 2006/09/11 20:21

今後の課題??

---------------

主位的・予備的
 という表現は、択一的請求の場合に限定する。

主位的・予備的
 という表現は、一次的、二次的請求の場合の併用使用を容認する。
ハ 
主位的・予備的
 という表現以外に
 請求権競合の場合の
  一次的、二次的請求という表現を
 取り入れる
-------------
 上記、イ、ロないしハ、のどれを今後採用するのか。
 町村先生

   学会で、統一して下さい!!
   

投稿: 弁護士五右衛門 | 2006/09/11 20:52

 すみません。誤字、誤記載が多かったです。
 これ以上、町村先生のブログを汚すのはやめます。スミマセン!


2 法律的には、選択的併合の事件ではない。

2 法律的には、択一的併合の事件ではない。

投稿: 弁護士五右衛門 | 2006/09/12 04:07

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