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2006/08/28

Jugement:ビラ配り住居侵入に無罪

東京地裁の判決である。NHK産経新聞サイト等参照。

NHKサイトでは「ビラの内容が風俗を乱したり犯罪を助長したりする内容でなければ、廊下などに立ち入ることが、すべて刑事罰の対象になるわけではない。今回のマンションには、政治的なビラの配布を禁止する表示もなかった」と判示したとある。

ビラの内容によって許されたり許されなかったりするのだとすると、少し危うさを感じるが、悩ましいところである。

それはともかく、立川ビラ訴訟でも一審は無罪で、控訴審東京高裁が有罪としたのだったか。今回はどうであろうか?

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法律・裁判」カテゴリの記事

コメント

マンション内へのビラ配りについては、立川の事件のときにも少し考えましたが、難しい問題だと思います。確かに、たとえマンション内に不特定多数の人物が立ち入り、居住側もそれを黙認していたという状況であっても、マンション内は公道とは異なる私的領域である以上、居住側には誰の立ち入りを認めるかについて決定権があるといわざるをえません。そうだとすると、居住側が明確に特定の人物の立ち入りを拒んだ場合には、その人物が表現の自由を盾に自己の立ち入り行為を正当化することは、やはり苦しいと思います。

しかしここで問題なのは、マンションの共用部分については、特定の人物ではなく、マンションの居住者の共同所有(区分所有法については詳しくないので、間違っていたらごめんなさい)となっているため、何をもって居住者全体の「意思表示」があったとするか、ということです。例えば、居住者の8割が共産党関係ビラの投函を明確に拒絶していたとしても、残りの2割が容認(あるいは中立的)していたというような場合には、共用部分への立ち入りを拒絶することは困難ではないでしょうか。なぜなら、仮に1人の居住者(以下、Aとします)の友人が他の居住者全てにとって好ましくない人物であり、他の居住者からすればその友人の立ち入りを拒みたい場合であっても、Aがその友人を自室に招き入れたいと望んだのであれば、Aの居室に立ち入るためにその友人が共用部分に立ち入ることを拒否することはできないはずだからです。

私は、どうも共産党系の人々のビラ配りだけが結果的に検挙されている現状を見る限り、特定の共産党系の人々を嫌悪する居住者が、無関心な他の居住者の声を勝手に「代弁」して行動しているのではないかという懸念をもっています(共産党系の人々の意見に賛同する居住は絶対的少数かもしれませんが、だからといって当然に他の居住者全てが共産党系の人々の意見に対して敵対的であると決め付けるのは早計でしょう)。共有部分に誰を立ち入らせるか、させないかということを、一部の居住者あるいは管理権者の決定に委ねてよいのかということは、考えてみる必要があるのではないでしょうか。

投稿: 一LS生 | 2006/08/28 15:07

>一LS生さん

管理組合理事会で立入りを禁止した事案です。事案をきちんと読みましょう。

投稿: 通りすがりの在外ブログ読み | 2006/08/29 02:41

管理組合理事会の決定があっても無罪判決が出ている理由として、実質的な部分で、各居住者の多様な意向、といったものが考慮されているように思うのですが、この辺は、他の方のご意見もうかがいたいですね。

投稿: yjochi | 2006/08/29 13:43

管理組合理事会で立ち入り禁止の決定をしていたというのはその通りですね。そして、判決は管理組合理事会で立ち入り禁止の決定をすれば、その決定自体は拘束力を有するとしているようです(ただ、本件ではその決定の趣旨が周知されていなかったことから、例外的に拘束力を認めなかったということでしょうか)。しかし、私としては既に述べたように、多数決の決定で共用部分に誰を立ち入らせるかを当然に決定できるかについては、疑問があるところです。

ところで、仮に多数決で共用部分への立ち入りを禁じることができ、その決定に反して立ち入った者については居住者の一人が現行犯逮捕できるとすると、ビラ配りよりもはるかに迷惑な訪問販売業者やピンクチラシ配布業者が摘発されたというニュースがもっとあっていいと思うのですが、そういったニュースは寡聞にして聞きません。このことについては、どう考えたらよいのでしょうか。

立川の事件については、有罪説の方からは、確か「被告人が管理者からの再三の警告を無視して立ち入った」ということが根拠の一つとして挙げられていたように思います。しかし、本判決では「共用部分への立ち入りを禁じるマンション側の決定の趣旨は、被告人に対して十分に伝わっていなかった」と認定されていることからすると、上記のような理由づけは当てはまらないように思います。本件においても被告人の行為が当然に有罪となるとすると、例えば私がマンション内の規約を盾にたまたま訪れた訪問販売業者を現行犯逮捕して警察に突き出しても、警察は住居侵入で立件してくれることになりそうですが、現実は必ずしもそうではなさそうです。普通は相手にされないか、相手にしてくれても業者側を署で取り調べて釈放するという程度でしょう。そうだとすると、ビラ配りをした被告人を逮捕した挙句、23日も拘束した警察の措置は、仮に被告人の行為に構成要件該当性が認められるとしても、同種の事案と比較して、明らかに均衡を失したものといえるのではないかと思います。

判決全文を精査しておらず(ウェブで探してみらのですが新聞記事しか見つからなかったためです)、断片的な情報をもとに書いているため、認識に誤りがある可能性は否定できませんが、以上が現時点での私の考えです。

投稿: 一LS生 | 2006/08/29 17:19

新聞記事によれば、裁判所の認定は、「立ち入り拒否の張り紙は商業ビラの投かん禁止とも読み取れ、マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」ということのようですね。いずれにしてもこういった認定がされていることからすると、本件は「管理権者から居住者の総意(これを本当に「居住者の総意」と言ってしまってよいのかがそもそも疑問ではあるのですが)としての立ち入り拒否の意思表示が事前に明確に示されていたにもかかわらず、その後も警告を無視して再三立ち入ったという事案」ではないだろうと思います。

投稿: 一LS生 | 2006/08/29 17:27

ビラ配り如きで逮捕されて、公務員のカラ出張や裏金作りは捕まらない。一市民としては単純に警察権力の恣意的な運用が許せない。京都で噴出している同和利権腐敗にしても、特定職員による20年以上の無免許運転が捕まらなかったりと警察の「お目こぼし」があったのではないかと噂されている…。いくら民主主義の法治国家でも法律の適用を調整できるなら権力者が好き放題できてしまう。北朝鮮をバカにできない。

投稿: motida | 2006/08/30 04:01

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受信: 2006/08/28 23:54

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