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2006/07/22

arret:ブリ・ハマチ・カンパチを集合動産譲渡担保にした場合の取扱

最近民事手続関係の新判例が多い。
最判平成18年7月20日
1 動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合,後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない。  
2 集合動産譲渡担保の設定者が,目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。

事案は、Yが自己所有のいけすの養殖魚にA,B,Cと譲渡担保を設定し、その後、Xに譲渡し、これを預託してもらい、買い戻した上でフィレ加工して再度譲渡するという内容の契約を締結した。
無理がたたって民事再生となったので、XがYに所有権に基づくいけす内養殖魚の引き渡しを求めた。

原審はXY間の譲渡契約を有効とし、Xの所有権に基づく請求を認容。

最高裁は、詳しくは原文を見て欲しいが、Xとの第一の売買も実質的には譲渡担保なのだから所有権に基づく引渡請求権は生じないこと、そして譲渡担保に供されている動産について劣後する譲渡担保を設定した場合、劣後する譲渡担保権者は私的実行をすることができないし、占有改定による引き渡しでは即時取得は成立しないと判示した。

契約は二つあり、二番目の方は真正な売買契約であって譲渡担保契約ではないということを前提にしつつ、以下のように判示した。
「対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該処分は上記権限に基づかないものである以上,譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない」

かくして、いけすの中のブリ、ハマチ、カンパチで、第一の契約の対象となったものは先順位の譲渡担保権者に優先権があるということになり、第二の契約の対象となったものは「通常の営業の範囲」内か外かを審理するべく差し戻された。

スジとしては至極当然である。
勉強の素材としては、譲渡担保が担保権として扱われることや、占有改定による引き渡しの効果、集合動産譲渡担保の目的物を売却することの限度が明確となっている点など、見るべき点が多い。

(追記)コメント欄でご指摘いただいた関連判例
  福岡高裁宮崎支判平成16.10.29金法1735-47
  金法1748号53頁、「銀行法務21」660号69頁に評釈があります。

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コメント

KYさんのコメントを拝見して,「ブリ」「集合動産譲渡担保」でLEX/DBを検索してみたら,ご指摘の判例が出てきました。たしかに事件は別のようですが,代理人はかぶっているし,漁場は同じですね。これじゃ,原審だと思っても無理ないですね。

例の鋼材の判決とあわせて読むと勉強になりそう。

投稿: h | 2006/07/22 20:18

では、KYさんご希望により削除しますが、ご指摘の判決は参考になるので、本文に追加させてください。

上記hさんのコメントにある判決は、本文参照です。

投稿: 町村 | 2006/07/22 21:01

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