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2006/07/09

arret: 実親子関係不存在確認が権利濫用となる可能性

最判平成18年7月7日 PDF全文
最判平成18年7月7日 PDF全文

既に多くの報道がある、実親子関係不存在確認請求が権利濫用となる可能性を認めて破棄差戻とした事例である。
真実の血縁関係がないのに、親子関係不存在の確認を親族からすることが権利濫用になり許されない場合があり得る理由として、最高裁は以下のように指摘する。

・まず民法自身が実親子関係と異なる戸籍記載の発生を容認する場合があるので、絶対に真実の親子関係が戸籍記載に反映されなければならないわけではない。
・虚偽の出生届で戸籍に実の子と記載されたときでも、そのことを前提に長い間親子として暮らし、他の兄弟親戚との関係でもそのように暮らしてきた場合、判決で実親子関係不存在を確定させると、実の子とされたことになんら責任のない子の精神的苦痛が大きく、生活基盤も崩される。
・両親が死亡しているので、改めて養子縁組をすることもできない。

その上で、権利濫用となる要件は以下のように列挙する。
・戸籍上の両親以外の第三者である丁が甲乙夫婦とその戸籍上の子である丙との間の実親子関係が存在しないことの確認を求めている場合であること
・以下1〜5などの諸般の事情を考慮して、実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるとき
1) 甲乙夫婦と丙との間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ
2) 判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより丙及びその関係者の被る精神的苦痛,経済的不利益,
3) 改めて養子縁組の届出をすることにより丙が甲乙夫婦の嫡出子としての身分を取得する可能性の有無
4) 丁が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機,目的,
5) 実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に丁以外に著しい不利益を受ける者の有無

本当の子ではないのに、戸籍上は本当の子として記載され、そうやって育てられたが、両親も兄弟もそのことは知っている、ある日突然、本当の子供ではないことを知らされる、といったドラマによくあるようなストーリーだが、最高裁は意外と人情家だという印象を受ける。

問題は、この「権利濫用」によりどのような判決が下されるのかである。
請求を棄却するのか、それとも訴えが却下されるのか?
実体的な権利濫用なのか、訴訟上の訴権濫用ともいうべきものなのか?

判決文のニュアンスからすると、真実の親子関係が存在しないことの確定をすること自体が権利濫用になるといっているので、あるともないとも確定しないことが必要、すなわち訴え却下が適当なのではなかろうか。
そして、既判力を考えてみても、真実の親子関係不存在確認請求を棄却すれば、真実の親子関係の存在が対世効をもって確定するわけだし、仮に積極的に親子関係の存在が確定されないとしても、権利濫用となる理由の一つに原告の提訴に至った動機などが考慮されるとすれば、他の人(子供自身も含む)が原告となった場合は違う判断が出ても然るべきだと考えられるので、不存在とはいえないことに既判力が生じるのはまた適当でないと思われる。

従って、差戻審では新たな事情が出てこない限り、訴え却下判決を下すべきだと考えられるが、どうであろうか?

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