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2006/03/20

news:泥沼の企業紛争と弁護士懲戒

報道によれば、かつて衆議院議員で道知事選にも立候補したことのある伊東秀子弁護士が、札幌弁護士会から戒告処分を受けた。
やや古い話で、昨年11月4日が処分の日のようで、現在は日弁連に異議申し立て中である。

興味深いのは、この処分が同じ案件に関する裁判所の判断と食い違っている点だ。

その経過は、記事から読み取れる限り、次のようなもののようだ。

・伊東弁護士の顧問先企業(記事では代理人を務める企業)が、50%の株式を握るグループ企業とトラブルになる。
・取締役側は、新株を発行して(自らに?)割り当てて、防衛をはかる。ただし、この新株発行を決定した株主総会は大株主グループ企業に招集通知を送っていない瑕疵があった。
・大株主の申し立てた新株による議決権行使禁止(?)の仮処分が裁判所から下る。
・大株主であるグループ企業は当時の取締役の解任決議を株主総会で提案。
・取締役側は、裁判所の決定が本案で確定するまで行使が可能と解釈し、株主総会で解任決議案を否決。
・このほかにも取締役側が虚偽の取締役会議事録を作成して書証として提出
・大株主グループ企業はこの企業を買収
・伊東秀子弁護士に対し、上記の「裁判所の決定が本案で確定するまで議決権行使が可能との解釈」を取締役に指南したり、虚偽の取締役会議事録作成を指示したりしたことを理由に、損害賠償請求
・伊東秀子弁護士は否認
・東京地裁は昨年11月、「(代理人として)違法な指導をしたとは認められない」として請求を棄却
・同月、札幌弁護士会は伊東秀子弁護士に対し、仮処分決定があっても判決確定まで議決権行使が可能と誤解して取締役に伝えたことを認定して、戒告処分

真相はもちろん私には分かりかねる。なんとなく伊東秀子弁護士が筋違いの責任追及をされているような印象も受けるが、まあ藪の中である。
興味深いのは、弁護士会の懲戒処分と東京地裁の損害賠償請求訴訟に対する判決とが明らかに異なる事実認定にたって下されていることだ。もちろん法的には異とするに足りないことだが、この食い違いが制度的に是正される可能性はない。
しかも、弁護士会による懲戒は身内に甘いと(弁護士以外からは)見られているだけに、裁判所も認めない懲戒根拠事実をどうやって認定するに至ったのか?

伊東秀子弁護士は自身のサイトを独自ドメインでお持ちなので、是非そこで自らの問題に関しても情報を明らかにしてもらいたいものである。

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コメント

不可思議です。

刑事と民事で事実関係が食い違うというのは
ありうることで実際食い違うことも仕方ないという形で処理されているわけですが、
刑事と懲戒、民事の主文と懲戒ならまだしも、民事の判決理由中の判断と懲戒の場合には一般に裁判所の判決理由中の判断を尊重するものと考えられます。
ですので、懲戒理由にはなぜ裁判所の判断と違う点に基づいて懲戒するのかといったいわば理由の理由ともいうべきものが求められないんでしょうか。

投稿: 東馬 | 2006/03/20 19:19

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