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2006/03/21

arret:入会権者を男子孫に限ることと公序良俗違反

最判平成18年3月17日
1 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は民法90条に違反しない。
2 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は民法90条に違反し、無効である。

本件入会部落の構成員となるためには、原則として以下2要件を満たす必要がある、
(1)上告人らが本件払下げ当時のA部落民又は明治40年から昭和20年までの間に一定の要件を満たしてA部落民と認められた者の男子孫であり,現在A区内に住所を有し居住していること
(2)上告人らがA区内に住所を有する一家の世帯主(代表者)であり,被上告人に対する届出等によってその役員会の議を経て入会したこと
この慣習は公序良俗に反するとして、実質上世帯を代表する女性が入会部落の構成員たる地位の確認を求めたのが本件訴えである。

最高裁は、上記の(2)男子孫要件について、次のように判示した。
「本件慣習のうち,男子孫要件は,専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり,遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。
 男子孫要件は,世帯主要件とは異なり,入会団体の団体としての統制の維持という点からも,入会権の行使における各世帯間の平等という点からも,何ら合理性を有しない。このことは,A部落民会の会則においては,会員資格は男子孫に限定されていなかったことや,被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体では会員資格を男子孫に限定していないものもあることからも明らかである。被上告人においては,上記1(4)エ,オのとおり,女子の入会権者の資格について一定の配慮をしているが,これによって男子孫要件による女子孫に対する差別が合理性を有するものになったということはできない。そして,男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らし,入会権を別異に取り扱うべき合理的理由を見いだすことはできないから,原審が上記3(3)において説示する本件入会地の入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても,男子孫要件による女子孫に対する差別を正当化することはできない。」

内容的な評価はいのけんブログに任せるとして、ロースクール的には以下の点に注目。
・私法関係に憲法の効力が直接は及ばない間接効果説に基づき、民法90条の問題として処理されている
・入会権者(入会部落民)たる地位の確認の被告適格が、権利能力なき社団としての入会部落に認められている(=入会権者全員を相手方とする必要的共同訴訟ではない)
・本件では、入会団体への入会申請をしているかどうか、主張立証もないのだが、最高裁は慣習を有効と認めている団体に入会申請をしても認められる可能性はないから、入会申請をしていないことを理由に団体構成員の地位を認めないのは信義則違反だとしている。極めて柔軟な判断であり、注目される。

なお、滝井判事の補足意見は、一見すると戦前の話ですか、という感じだが、入会という前近代的な土地利用形態であれば、それもやむを得ないのであろうか?
ただし、滝井判事も収益関係・負担関係の変化が入会慣習の合理性にどのような影響を与えるものか検討しなければならないと言っているので、単なるアナクロニズムというわけではなさそうである。

cf.原判決の時のこのブログ

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コメント

入会訴訟に関与したことのある者です。入会権の宣伝?のため、僭越ながらコメントさせていただきます。
入会部落は、江戸時代の村落共同体から「行政村」としての法形式が剥奪された後の社会的存在としての私的集団を指すもので、必ずしも権能なき社団と法的に評価されるべき要件を充足している必要はありません。入会部落構成員と全く同じ構成員を有する権能なき社団を「入会団体」と呼ぶのであって、これは入会部落と必ずしも同一のものでなく、このような入会団体の訴訟法的な意味を定めたのが平成6年最判です。平成18年最判は、訴訟法上、このような入会団体の会員の地位を有することについては、入会部落の構成員の地位を有することと全く同一に解するべきとしたことに意味があります。これは、入会権自体の存否の確認の当事者適格の問題とは別の論点です。
滝井補足意見は、江戸時代に形成された地縁的村落共同体における慣習がその本質的同一性を失わずに社会的事実として存在しつづけるかぎりそれを法的権利として保護することを承認しつつ、その慣習が現代の市民社会において合理性をもたない内容であればその限りにおいて規範性を有するとはいえないといっているものと思います。つまり、「世帯主」を権利主体とする入会慣行が、「家」制度の解体によってどのように変容したのかを具体的に明らかにした上で、変化した「慣習」のうち不合理な一部を無効と判示すべきといっているものと考えます。

投稿: あぱ | 2006/03/22 13:42

あばさんの、
>これは、入会権自体の存否の確認の当事者適格の問題とは別の論点です。

という点は、どこを指しているのでしょうか?

町村先生の、
>・本件では、入会団体への入会申請をしているかどうか、主張立証もないのだが、最高裁は慣習を有効と認めている団体に入会申請をしても認められる可能性はないから、入会申請をしていないことを理由に団体構成員の地位を認めないのは信義則違反だとしている。極めて柔軟な判断であり、注目される。

この部分でしょうか?

投稿: こう | 2006/03/23 00:11

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