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2006/02/03

Book民法案内

答案採点に別の校務や公務、雑用に校正と、仕事のラッシュの中、我妻先生の民法案内を衝動買いした。
不勉強の極みで、今に至るまで読んでいなかったが、最初の私法の道しるべは正に法科大学院学生に読んでほしい法律の学び方が満載である。
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例えば、法律を暗記する学問だと思い込んでいる人が意外に多いが、理解することが重要だということが初っぱなに書いてある。

このようにいうと、たちどころに、法律学は膨大な知識を要求されるのだから暗記は必要だという反論が受験生から返ってきそうだが、だいたい闇雲に暗記して身に付く知識など具体的な問題に適用して答えを得るのに役に立つわけがない。逆にある法理論・法準則を具体的な事例に適用して法的効果の有無を論じることができる程度に理解すれば、自ずとその法理論や法準則は覚えてしまうものだ。仮に忘れても、思い出すのは容易である。
 例えば民法177条、条文の文言と、その趣旨(公示の原則、対抗要件)を理解した上で、具体的な問題事例(例えば二重譲渡とか、相続が絡んだり差押えが絡んだり取消が絡んだり)にどのように適用されるのか、そしてそれは何故なのか、問題はないのか、といったことを学び、自分なりに177条の法準則を具体的事例に適用して答えることができる程度に理解するというのがオーソドックスな勉強法だ。
 ところが、暗記モノだと勘違いしている人は、177条の条文と趣旨に加え、問題事例の構図とその解決方法とを丸暗記して答案に再現しようとする。もっといくと、いくつかの論文式問題とその模範答案を丸暗記して、それを試験で再現しようとする。こういう勉強法だと、問題事例のどこが重要で、その解決方法が出てくるのかが理解できず、従って重要な点で事例が変わっても、変わったことにすら気づかずに模範答案の機械的な再現に努めることになる。一見良くできたように見えても、当の問題にはまるで応えていない答案の出来上がりである。

かような惨めな答案を避けるためには、やはり、「自分なりに177条の法準則を具体的事例に適用して答えることができる程度に理解する」ということが必要なのである。

もう一つ、予習は一番効果があるとも書かれている。
講義案や教科書を一読するだけでもずいぶん違うが、予習して自分なりの疑問点をまとめて講義に望むと、先生の話はより理解しやすく、また疑問を解消する糸口もつかみやすいというわけである。そのコロラリーとして、せっかく教科書や講義案を用意して授業を行っても、学生が読んできてくれなければ、結局その内容を繰り返す授業をせざるを得ず、快心の授業はできないとも書かれている。
この部分などは、ロースクール立ち上げ前夜にロースクールの教育方法を議論した時の内容とほとんど変わらない。ソクラティック・メソッドや対話式、双方向式ということは大教室でマイクを使った授業では無理と書かれているが、双方向式授業かどうかに関わらず、予習してくることを前提にした講義が最も効果的であることは変わらない。講義が効果的というのは、学生にとっての学習のメリットが大きいということでもある。

さらには、教科書を理解しながら読むとは、という点も示唆に富む。
来年度の南山入学生向けガイダンスは、この本をタネ本にすることにしよう。

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学問・資格」カテゴリの記事

コメント

全くの暗記と考えている人はごく少数で

暗記>理解と考えるか

いやそうじゃない
理解>暗記であるといったふうに考えているんだと思います。

後、予習が活きるのはその講義次第なの
かなと思います。シナジーという意味です。

参考までに法律学習マニュアルを書かれた
商法の弥永教授は復習に殆ど重点を置いていたようです。

#早く自分にあった型を見つけるというのが
やはり、大事なのかなと考えます。

民法案内は
本屋で見かける気になったほんの一つでしたが町村教授も絶賛されているし、レビューで
も悪いのを見かけないので冬休み中に
読んでみよう。

投稿: 東馬 | 2006/02/03 16:38

 民法案内は、旧司法試験を受ける学部学生にはまずこれを読むように勧めていました。
 その後、民法が全面口語化されたり、一部改正になったりしている部分はあるので、さすがに古くなってきたわけですが、内容の素晴らしさが替わらないまま、時代に対応する形で改定されたのであれば再びお勧めの書籍に加えたいところです。

投稿: 小倉秀夫 | 2006/02/03 16:49

法学セミナー創刊号からの連載ですから、50年くらい前の記述ですね。わたしの父がよんでいたかどうか…
 ダットサンが70年たっても現役ですから、普遍的なところはかわらないといったところでしょうか。
 ただ、当時の東大生ですと、まだ旧制のなごりがあったから読書量・国語力はいまの比ではなかったのではないでしょうか。

 

投稿: 岡本 哲 | 2006/02/03 17:15

とりあえず現時点では物権法上下まで出ています。「私法の道しるべ」は、さほど大きくはかわっていないんじゃないかな。総則と物権は買ったけどまだ読んでいません...。

現代に対応するためには必要でしょうし、補訂がなされているとはいえ、我妻先生の本に「インターネット」などと書いてあったりすると(あるかどうかは判りません)、違和感を感じるだろうな~(笑)。

投稿: h | 2006/02/03 17:32

 祖父の書棚にあった戦前のものには「妻の無能力」の説明がありました。我妻先生にしては珍しく歯切れが悪い文章でした。戦後のことを見抜いていたのかも知れません。

投稿: ハスカップ | 2006/02/03 17:59

ふむふむ。勉強になります。やはりこういう図書を、広い意味での法曹の先輩方が多くの人の目に触れる場所で取り上げてくれると、良いですね。

僕は暗記は、試験前ぐらいにしかやらないので、普段は、結構、疑問だらけで勉強したりしていますけど・・・

投稿: こう | 2006/02/03 21:06

私法の道しるべも、もちろん去年の5月時点での改訂版ですから、ロースクールなんてのも出てきますよ。
ADRとかも。もちろん民法は口語のものです。
でもインターネットは見つけられなかったな。

法律学とその解釈論の学び方ってのは、2000年以上の伝統があるのだから、たかだか50年前の本では古いとは言わないのですよ、お若い方々。そりゃ素材となる法律はずいぶん変わりますが、またインターネットなんてのも出てきてますがね、法解釈は200年前のやり方とそう大きく変わりません。まあ、流行は時代や地方によって様々ですけどね。

投稿: 町村 | 2006/02/04 02:07

あーほんとだ。ロースクールでてきてます(47頁)。インターネットも出てきますね(43頁)。

しかし、私が、私法の道しるべをはじめて手に取ったのが、今から27年前。そのころは、欧文タイプがせいぜいでした。仏語をやっていましたから、オリベッティのインターナショナルキーボード仕様(アクサンやセディーユをうてるやつ)を使っていました。日本語は手書き。情報処理論というコンピュータ関係の授業はありましたが、PL/Iとかいうのをやりました。

今や、母校に行くと、単なる自習室だったところにパソコンがずらりですから。技術の進歩というのはすごい。

我妻先生は、たしか「民法案内」を口述(録音)で作られていたというのを読んだことがあります。川井先生の補訂による加筆であることは重々判りつつ、あの我妻先生のお口から「インターネット」とか「ロースクール」なんて言葉がでているところを、つい想像してしまいました。

付録の「私の試験勉強」も、学ぶところがたくさんありますね。

投稿: h | 2006/02/04 17:07

私の試験勉強は、どうも無駄に苦しい思いをしたというところが一番印象に残ってしまって。
教科書の読み方なんてのは、是非ロースクール学生に読ませたいです。

投稿: 町村 | 2006/02/04 22:34

法学セミナーの初期のころは、各大学の学年末試験問題が掲載されています。
ひねった事例問題がほとんどない時代だったことがうかがわれます。基本書読み込みが通用しやすい試験問題といえましょうか。

投稿: 岡本 哲 | 2006/02/05 01:43

できれば我妻さんのことばを残す形で加筆してほしかったなぁ

投稿: 東馬 | 2006/02/06 00:14

フランスの民法の教科書に、Aubry et Rauというのがあって、これが後継者によって何度も改訂されてます。
ところが4代目の改訂者は、地の文に手を入れて、どこまでが原型なのかが分からないようにしてしまいました。そこで5代目の改訂者が、原著作とその後の改訂とが区別できるような形に再改訂したと言われています。
(院生のとき、北大の瀬川先生にそう習いました。)
というように、洋の東西を問わず東馬さんの希望は普遍的なものですね。

投稿: 町村 | 2006/02/06 00:29

フランスはナポレオン以来の愛書家の国というイメージがあるんですが、旧版と現行版を集めるというのは標準ではないんですねえ。

わたしのフランスのイメージはバルザックやゾラからのものなのか、弁護士は叢書家と思っておりました。

投稿: 岡本 哲 | 2006/02/06 00:59

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